ビタミンDが高齢者の股関節骨折からの回復を後押し
股関節を骨折した高齢者では、ビタミンDの摂取が十分な場合、手術後に歩行可能となる確率が高いとする研究結果が報告された。
研究を率いた米ラトガース大学栄養科学部のSue Shapses氏は「ビタミンD欠乏は、歩行の制限を招きかねない」とし、高齢者に対しては1日当たり20㎍(800IU)のビタミンD摂取を勧めている。研究結果の詳細は、「American Journal of Clinical Nutrition」2月19日オンライン版に掲載された。
ビタミンDは骨の健康に欠かせない栄養素であり、乳製品や強化シリアル、強化果汁、濃緑色の葉物野菜、脂肪の多い魚などの食品や、ビタミン剤などに含まれているほか、日光浴により皮膚でも作られる。
一方、股関節骨折は、転倒を原因とするけがの中では最も深刻なものの一つであり、回復が困難で、骨折後に一人で生活することができなくなる人も多い。
米疾病対策センター(CDC)によると、米国では毎年30万人以上の高齢者が股関節骨折で入院するが、その原因として転倒が95%以上を占めるという。
この研究では、股関節骨折後に手術を受けた米国およびカナダの患者290人(平均年齢82歳で、73%が女性)を対象に、血液中のビタミンD濃度が可動性(歩行能力)に及ぼす影響を評価。対象者は、ビタミンDの濃度により、<12ng/mL、12~<20ng/mL、20~<30ng/mL、≧30ng/mLの4つの群に分け、解析した。
その結果、ビタミンD濃度が12ng/mL以上の人は、12ng/mL未満の人に比べ、術後30日時点で歩行できる人の割合が高く、調整後オッズ比は12~<20ng/mLで2.61、20~<30ng/mLで3.48、≧30ng/mLで2.84であった。術後60日時点での結果も、同様であった。
高齢者の栄養指標であるGeriatric Nutritional Risk Index(GNRI)による評価で重度/中等度のリスク(GNRI<92)に分類された患者では、術後30日時点では全体的な傾向として可動性が低かったが、術後60日時点では、この傾向は見られなかった。ビタミンD濃度およびGNRIスコアと死亡率の間に関連は認められなかった。
これらの結果を受けてShapses氏らは、「この研究により、ビタミンD欠乏が手術後の歩行障害と関連することが明らかになった。GNRIも歩行障害に関係するものの、予測因子としてはビタミンD欠乏ほど信頼できるものではないことも分かった」と結論づけている。
そして、「次の研究での重要課題は、ビタミンDがどのように可動性に影響するかを調べることだ。例えば、ビタミンD欠乏が筋肉や認知機能、あるいは他の器官系へ直接的な影響を及ぼしているのかどうかはまだ解明されていない」と今後の展望を述べている。(HealthDay News 2020年4月2日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://academic.oup.com/ajcn/advance-article-abstract/doi/10.1093/ajcn/nqaa029/5740747?redirectedFrom=fulltext
構成/DIME編集部
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April 26, 2020 at 02:04PM
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