【上海=南部さやか】中国湖北省の武漢市を中心に海外に拡散する新型コロナウイルスによる肺炎で、発熱などの肺炎特有の症状を伴わない事例が出ている。出入国の際の体温検査だけでは感染を捕捉できない恐れがあるため、武漢市からの渡航というだけで制限的な措置を取る国・地域も現れている。
中国の研究チームは24日、英医学誌ランセットに、広東省深センで無症状の感染者が見つかったとする報告を発表した。昨年末に武漢を旅行した家族の1人で、ほかの家族が肺炎を発症したことから検査を受け、感染が確認されたという。武漢大人民医院も、発熱などの症状を示さなかった感染者の事例を報告している。
これまでに感染者が確認された国・地域の多くは、武漢からの直行便が就航していた。中国政府の資料によると、昨年12月22日から武漢市が封鎖措置を取るまでの1月23日までに、武漢の空港から日本を始め、米国やフランス、タイなど21か国・地域に計703便の直行便が就航していた。
台湾当局は25日、航空会社などに、中国人旅行客の身分証をチェックし、居住地が湖北省となっていれば入境を拒否すると通知した。すでに5人の感染が確認されている香港の
また、フィリピンの航空当局は、ウイルスの潜伏期間を考慮し、武漢から中部カリボ空港に到着した便の乗客約500人の送還を決めた。
各政府が神経をとがらせる背景には、入国時の隔離などを恐れた検査逃れの懸念があるからだ。ある中国人女性は21日、発熱の症状を自覚しながら、解熱剤を服用して空港の体温検査を通過し、フランスに入国した。女性が自らのSNSに経緯を書き込んだことでネット上で批判が集まり、仏政府がウイルス検査を受けさせる騒ぎとなった。
中国国内でも、武漢からの人の流れに警戒が強まる。大学の街として知られる武漢では、春節を前に多くの大学生らが帰省のために移動し、各地の感染拡大につながっているとの指摘もある。北京市当局は24日、市内に向けて通知を出し、感染が確認された地域から市内に戻った住民は、当局に登録するとともに、潜伏期間の目安となる14日間の自宅待機を呼びかけた。
北京市など各地の地方政府は25日までに、ペスト流行など「特に重大な衛生安全事件」に対応するための「1級」態勢に入った。街の封鎖や集会の中止など強制措置が可能になる。
2020-01-25 14:23:00Z
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