Wednesday, August 24, 2022

分子標的薬の皮膚障害にビタミンC誘導体を - 時事メディカル

 がん薬物療法の成績は、がん細胞の特定標的分子に作用する分子標的薬の登場により飛躍的な進歩を遂げた。しかし、当初は副作用が少ないと考えられていた分子標的薬でも皮膚障害などが認められ、患者のQOL低下の要因となっている。神戸大学病院薬剤部副薬剤部長・講師の山本和宏氏らの研究グループは、分子標的薬に起因する皮膚障害(手足皮膚反応)の予防に、ビタミンC誘導体(ビスグリセリルアスコルビン酸)を配合した薬剤が有効である可能性を見いだしたとOncologist2022; 27: e384-e392)に発表した。

有効な予防・治療法は確立されていない

 分子標的薬(マルチキナーゼ阻害薬)に起因する皮膚障害に対し、発症機序に基づく予防・治療法は確立されておらず、経験則による予防法が行われているが効果は高くない。研究グループはマルチキナーゼ阻害薬による皮膚障害(手足皮膚反応)の発症機序に関する基礎研究を進めており、ビタミンC誘導体がマルチキナーゼ阻害薬による表皮角化細胞への毒性に対し抑制的に作用することを報告している。

腎細胞がん患者対象の特定臨床研究

 研究グループは、マルチキナーゼ阻害薬であるスニチニブを使用中の成人転移性腎細胞がん(mRCC)患者を対象に、ビタミンC誘導体配合製剤の安全性および皮膚障害の予防効果を検証する第Ⅰ/Ⅱ相単施設非盲検非対照試験を特定臨床研究として実施。対象には、ビタミンC誘導体含有クリーム(DGAクリーム)を手掌と足底の表面に保湿薬と組み合わせて2週間塗布した後に1週間休薬するスケジュールを2サイクル(6週間)行った。

 第I相試験で5例、第Ⅱ相試験では25例を登録し、最大解析対象集団(FAS)は24例、プロトコル遵守集団(PPS)は17例だった。第I相試験の5例に皮膚異常は見られず、第Ⅱ相試験の追跡期間中に3例が手足皮膚反応を発症した。手足皮膚反応の発症率はFASで12.5%(95%CI 2.7~32.4%、3/24例)、PPSでは17.6%(95%CI 3.8~43.4%、3/17例)と、神戸大学病院での先行研究における発症率(33.3%)と比べ大幅に低かった(P=0.030、)。

図. 第Ⅰ/Ⅱ相試験における手足皮膚反応の発症頻度

fig01.jpg

(神戸大学プレスリリースより)

 以上を踏まえ、研究グループは「スニチニブ投与中のmRCC患者に対するビタミンC誘導体配合製剤の安全性および皮膚障害の予防効果が示された」と結論。「今後、検証的な臨床試験を進めるとともに、ビタミンC誘導体配合製剤の有効性についてより詳細な機序の解明を目指したい」と述べている。

(小野寺尊允)

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