Wednesday, August 19, 2020

所得税はパート月給がいくらから差し引かれる? - マイナビニュース

所得税はいくらから引かれるのでしょう? 源泉徴収税額表をもとに所得税の仕組みや税金を取り戻す方法を解説します。

◆所得税はいくらから差し引かれる? 注意すべき収入金額は?
パートやアルバイトで得る収入は「給与所得」となります。給与所得の金額とは、年収から給与所得控除額を差し引いた金額です。この給与所得控除額は令和2年以降は最低55万円ですから、 給与所得者の場合、パートの収入金額が103万円以下(給与所得控除が55万円プラス所得税の基礎控除額48万円)で、他に所得がなければ所得税はかかりません。

これが一般にいわれる103万円の壁になります。

ただし、アルバイトやパートの方の場合、長期休暇などで時間の余裕があるときに多く働いてしまうと、その月の収入が多くなり、給与から税金が引かれてしまうことがあります。所得税法上、一定額以上の給与からは「源泉所得税を差し引く」ということが定められているからです。

では、税金が引かれてしまう給与の基準ってあるのでしょうか? 税金を差し引かれてしまった場合、その後、どのように対応すれば税金を取り戻せるのでしょうか? 解説していきます。

◆勤務先に課されている源泉徴収義務とは
所得税法上、一定額以上の給与からは所得税を天引きしなくてはならない義務が勤務先に課されています。勤務先が給与を支払う段階で天引きしなければいけませんのでこれを「源泉」といい、差し引く税目が所得税なので「源泉所得税」といいます。

そして、その事務手続きが勤務先にあるので「源泉徴収義務」といいます。

◆給与から天引きされる源泉所得税額は年々多額に
なお、この給与から天引きされる源泉所得税額は年々多額になっています。というのも、サラリーマンの必要経費といわれる給与所得控除額が税制改正のたびに引き下がり、図のように令和元年までの給与所得控除額と令和2年以降の給与所得控除額と比較すると、令和2年以降の金額のほうがおおむねどの所得者層でも10万円引き下げられています。
上段:平成29年分~令和元年分までの給与所得控除額(出典:国税庁資料より)/下段:令和2年分以降の給与所得控除額(出典:国税庁資料より)

したがって、税制改正があるごとに差し引かれる源泉所得税も多めになるというのが近年の状況であるということです。

◆給与から差し引かれる源泉所得税はこう決まる
実務では、アルバイトやパートを始める場合、「扶養控除等(異動)申告書」という書式を勤務先に提出します。

この「扶養控除等(異動)申告書」という書式を勤務先に提出すると、勤務先は「あっ、この人はココがメインの勤務先なんだな」ということで源泉所得税額表の「甲欄」の記載に準じて源泉所得税を差し引く決まりとなっています。

源泉徴収税額表は国税庁のホームページ等から入手することができます。

具体的な源泉所得税額は、社会保険料控除後の給与と扶養親族等の数の相関関係で決まります。設例を簡略化するためにアルバイトやパートの方で、親族の数が0人、社会保険加入対象外の方を想定して税額表を見ていきましょう。
令和2年以降の源泉徴収税額表 抜粋 (出典:国税庁資料より)
そうするとアルバイトやパートの額面が

・8万8000円未満……所得税差し引かれず
・8万8000円以上、8万9000円未満……130円所得税を差し引く

といった具合に源泉所得税のルールが決まっていることがわかります。

なお、令和元年までの源泉徴収税額表と令和2年以降の源泉徴収税額表とでは70万7000円以上の源泉所得税額が、令和元年分より大きくなっているので、給与計算をされる方は必ず令和2年以降の源泉徴収税額表を入手して計算するようにしましょう。

◆毎月の給与から差し引かれる源泉所得税は正確ではない
ただこのようにみていくと、アルバイト先(あるいはパート先)の毎月の給与から差し引かれる源泉所得税額は、該当月の社会保険料控除後の給与と扶養親族等の数しか考慮されていないことになります。

したがって、「学校のある時期はだいたい6万円程度なんだけど、休みの期間だけ10万5000円稼いだ」というような人の場合、10万5000円の月だけ

・10万5000円以上、10万7000円未満……1030円所得税を差し引く

というようなことが起こることとなります。しかし、この人を年収という観点からみると

・6万円×9カ月=54万円
・10万5000円×3カ月=31万5000円

となり、年収ベースでは85万5000円となります。

年収ベースではかからないはずの所得税が、社会保険料控除後の給与と扶養親族等の数しか考慮されていないから差し引かれてしまっているのです。

◆差し引かれてしまった源泉所得税はどう取り戻す?
給与所得者の場合、年収103万円までは税金がかかりません。しかし、上記の方の場合、年収ベースで85万5000円でも1030円×3カ月=3090円の源泉所得税が差し引かれ、その分手取りが少なくなっています。

この方が年末に同じ勤務先に勤め続ければ、通常、年末調整の対象者となり、年収換算で精算してくれるので1030円×3カ月=3090円差し引かれた源泉所得税が還付されます。

ただし、「アルバイトを途中で辞めた」あるいは「アルバイトを掛け持ちしている」というような人の場合、自分の年収を把握している人はアルバイト先ではなく、当事者本人ということになります。

◆特定の月だけ収入が多ければ還付される可能性が大
「アルバイトを途中で辞めた」というような人は、年末調整の対象から外れますので、確定申告することによって差し引かれた源泉所得税が正確かどうかを精算することとなります。所得税の基本は1月1日から12月31日までの正しい所得の状況に基づいて税金を計算することにあるので、差し引かれた源泉所得税額が多ければ、確定申告によって税金が還付されることもありうるのです。

アルバイトやパートで源泉所得税が差し引かれたというようなケースで「スポット的に特定の月だけ収入が多かった」というような方は、還付される可能性が大きいといえます。

所得税の基本は働いた月ではなくあくまでも年収なので、年収ベースで税金を再計算するという視点を持つといいでしょう。

文=田中 卓也(マネーガイド)

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