Monday, August 24, 2020

骨と筋力の維持に欠かせない「ビタミンD」、2日に1回は魚を - 日経Gooday

5年ごとに見直される「日本人の食事摂取基準」。最新の2020年版では、年齢が上がるほどたんぱく質が不足しないよう、目標量の下限が引き上げられた。これは、介護を招く「フレイル(虚弱)」を予防するためにはたんぱく質の摂取が非常に重要で、かつ、年をとるほど腸での吸収率が落ちるからだ(前回参照)。しかし、フレイル予防には、たんぱく質だけでなくビタミンDも大きな役割を果たしていることをご存じだろうか。特集第2回は、今回の改定で目安量が大幅に上がったビタミンDについて、女子栄養大学栄養生理学教授の上西一弘さんに話を聞いた。


ビタミンD の目安量が1日8.5μg へと大幅に引き上げ

 人間の体は、年齢とともに下半身を中心に筋肉量が落ちていく。そこにたんぱく質不足が重なると、筋肉量の減少がさらに加速し、心身の虚弱を意味する「フレイル」の状態になりやすくなる(詳しくは第1回参照)。

 フレイルは、「健康」と「要介護状態」の中間地点。そのまま放っておくと転倒や骨折などを起こし、寝たきりなどの要介護状態に陥ってしまう人が多い。中年期には、男性を中心に肥満やメタボリックシンドローム(メタボ)を気にする人が多いが、50代以降は、「脂肪の増加」よりも「筋肉の減少」への危機感を強め、積極的にたんぱく質をとる必要がある。

 実は、フレイル予防のカギとなるもう1つの栄養素が、ビタミンDだ。「たんぱく質をとる際、ビタミンDも意識してとるようにしてください」と女子栄養大学栄養生理学教授の上西一弘さんは話す。

 最新版の「日本人の食事摂取基準」(以下、食事摂取基準)では、ビタミンDの目安量が1日5.5μgから8.5μg へと大幅に引き上げられた。そこにはどんな理由があるのだろうか。

表1 最新の食事摂取基準ではビタミンDの目安量が大幅にアップ!

2015年版

年齢 1日の目安量
18歳以上 5.5 μg

2020年版

年齢 1日の目安量
18歳以上 8.5 μg

ビタミンD は骨の強化、筋力の維持に欠かせない栄養素

 「ビタミンDは、カルシウムの吸収に必要なたんぱく質を合成し、小腸からのカルシウムの吸収を高める働きがあります。また、筋力の維持にも関係することが近年分かってきています」(上西さん)。つまり、たんぱく質やカルシウムをとる際に、ビタミンDを一緒にとることで、骨を強化し、筋肉を維持することにつながるのだ。

 ビタミンDの健康長寿に与える影響については、近年研究が盛んに行われている。例えば、ビタミンDの血中濃度が低い人は骨折リスクが高いという報告(図1、*1)は、内外からいくつも出ている。

図1 ビタミンDの血中濃度と骨折の累積リスクの関係

対象は米国在住の女性1756人(平均年齢48.5歳)。ビタミンDの血中濃度が低い人は、追跡期間中に骨折の累積リスクが有意に上昇していた。(J Clin Endocrinol Metab. 2015;100(5):2046-2054.)

*1 Cauley JA, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2015; 100(5): 2046-2054.

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