家を購入する際に多くの方が利用する住宅ローン。月々の返済額を抑えるために注目すべきものが「頭金」ですが、相場としてどの程度の頭金を用意すれば、無理なく家を買えるのでしょうか。
この記事では、不動産の購入に必要な頭金の目安と、頭金ゼロでも家を買うことができるのか解説します。また、頭金ゼロで購入する場合の注意点や、月々に支払う返済額のシミュレーションも行い、頭金の必要性に迫ります。
頭金とは
頭金とは、ローンを使って何らかの商品を購入する際に、商品代金の一部を先払いして、ローンの総額から差し引くために使うお金のことです。住宅の場合は、住宅ローンを利用することなく、先払いする費用のことを頭金と呼びます。
たとえば4,000万円の家を購入する際、住宅ローンの総額を3,000万円に抑えたいとします。この場合、預貯金等から1,000万円を用意して先払いすると、予定どおり3,000万円の住宅ローンを組むことができます。ここで使う1,000万円が頭金というわけです。
頭金を多く支払えば、月々の住宅ローン返済額を下げられます。後に詳しくシミュレーションしますが、仮に4,000万円の家を頭金2,000万円で購入すれば、頭金ゼロで購入する場合と比較して、単純計算で毎月の返済額を半分にまで下げることが可能です。
頭金を増やせば増やすほど、住宅ローンの返済で必要になる利息が減ります。同じ金額の物件を購入するとしても、頭金の有無によって支払いの総額は大きく変わることになるのです。
頭金はいくら必要? 頭金の目安
一般的に支払われている頭金はどの程度なのか、目安を確認してみましょう。2020年7月現在、最新のデータとなるのは、住宅金融支援機構が公表している2018年度の「フラット35利用者調査」です。利用される頭金の平均額を、住宅のタイプ別に見てみましょう。
頭金の平均額(万円) |
住宅購入費用に対する頭金の割合 |
|
---|---|---|
注文住宅 |
636.5 |
18.7% |
土地付注文住宅 |
447.0 |
10.9% |
建売住宅 |
293.2 |
8.5% |
マンション |
714.1 |
16.1% |
中古戸建 |
203.0 |
8.2% |
中古マンション |
310.5 |
10.4% |
出典:「2018年度 フラット35利用者調査」
注文住宅と新築マンションは高い水準ですが、それ以外のタイプの場合、購入額の10%前後を頭金として用意することが一般的のようです。
頭金ゼロでも買えるのか
かつては頭金ゼロで住宅ローンを組むことはできませんでしたが、現在は頭金なしでも住宅を購入することは可能です。月々の支払額は増えてしまいますが、それでも構わないという場合には頭金ゼロで住宅ローンを組むこともできます。
預貯金がなくても、勤務先や年収などの条件が良ければ住宅ローンの契約ができることはメリットですが、頭金ゼロで住宅ローンを組む場合はいくつかの点に注意が必要です。これについては、次の項目で詳しく解説します。
頭金ゼロの注意点
頭金ゼロで住宅を購入できることは、初期費用なしで家を買いたいという方にとって非常に魅力的です。ただし、以下の3点には注意しなければなりません。完全に頭金ゼロで購入することは不可能な場合もあるため、あらかじめポイントを押さえておきましょう。
頭金をゼロにすると、借入金が増えて利息負担が増える
先ほどもお伝えしましたが、住宅を購入する際にかかる利息は、借入金に対してだけかかります。借入金の割合が増えれば増えるほど利息負担も増えることになりますので、合計で支払う利息額が高くなってしまうことに要注意です。
たとえば4,000万円の物件を購入する場合、10%の頭金を用意すれば、借入金は3,600万円にまで下げられます。頭金ゼロで購入する場合と比べて、400万円分の利息をゼロにできるため、トータルの利息負担が減ります。
諸費用分は現金で必要なこともある
不動産を購入する際には、物件の購入費用だけではなく、それに付随するさまざまな諸費用の支払いが必要です。不動産会社に支払う仲介手数料、住宅ローン手数料、登記費用、手付金、各種保険料などが代表的な諸費用です。
住宅ローンはあくまでも不動産そのものの費用を支払うためのローンなので、通常これらの諸費用を住宅ローンに含めることはできません。諸費用の支払いは現金の一括払いが基本になりますので、完全に手持ちの資金ゼロで住宅を購入できない場合があります。
諸費用ローンもあるが借入金利が高くなる
諸費用を支払うための「諸費用ローン」もありますが、これは住宅ローンとはまったく別に組むローンです。契約すると、住宅ローンと諸費用ローンを二重で支払うことになりますので、借入金利もさらに増えてしまいます。
諸費用にはどのくらい必要か
諸費用は注文住宅や新築マンションの場合で住宅価格の3~6%、中古住宅や新築一戸建て、建売住宅の場合で住宅価格の6~9%が目安です。
3,000万円の新築マンションを購入すると仮定した場合は、諸費用は90万~180万円前後になると考えましょう。
頭金別ローンシミュレーション
LIFULL HOME’Sでは、誰でも簡単に住宅ローンの返済金額を知ることができる「住宅ローンシミュレーション」をご用意しています。今回は住宅ローンシミュレーションを活用して、頭金ありとなしの場合の返済額をシミュレーションしてみます。
なお、条件は以下のように設定しました。
物件価格:3,000万円
世帯年収:400万円
金利:1%
借入期間:35年
頭金:0円、100万円、200万円、300万円、400万円、500万円
頭金 |
月々の返済額 |
ローン返済総額 |
---|---|---|
0円 |
84,686円 |
35,567,998円 |
100万円 |
81,863円 |
34,382,398円 |
200万円 |
79,040円 |
33,196,798円 |
300万円 |
76,217円 |
32,011,198円 |
400万円 |
73,394円 |
30,825,598円 |
500万円 |
70,571円 |
29,639,998円 |
頭金500万円を支払った場合のローン返済総額は29,639,998円です。ここに頭金の分の500万円を足すと、34,639,998円です。頭金0円の返済総額35,567,998円と比較すると、35年間で928,000円という差が生まれてしまいます。
頭金を用意できるかできないかによって、金利で100万円近く払わなくて済むかどうかが決まるのです。できる限り多くの頭金を用意してから住宅を購入したほうが、長い目で見れば総支払額が少ないことが分かります。
まとめ
家を購入するときに必要な頭金は、住宅の価格に対して10~20%程度が相場です。現在は頭金を用意しなくても住宅ローンを組むことはできますが、諸費用に関しては現金で支払うか、別途諸費用ローンを組んで支払わなければなりません。
シミュレーション結果からは、頭金を用意するかしないかによって、35年間で928,000円という支払総額の差が生まれることも分かりました。長い目で見れば、より多くの頭金を使って住宅を購入したほうが総支払額は少なくなります。
頭金に関するよくある質問Q&A
最後に、住宅の頭金に関するよくある質問にお答えします。これまでの解説を補足する内容にもなりますので、疑問を解決するために活用してみてくださいね。
Q1.貯金はどのくらい必要?手元にある費用すべて頭金に回して大丈夫?
頭金は多く支払えば負担は減りますが、手元の資金すべてを頭金に回すことはNGです。人生はいつ何が起きるか分かりませんので、最低限の備えとなる現金や生活費は必ず残しましょう。生活費の3ヶ月から6ヶ月分が目安です。
Q2.結局、今の年収でどのくらい貸してもらえるのでしょうか。
住宅ローンを組む場合、貸し付けの上限額の目安は、額面年収の7~10倍程度。一般的には年収の7倍が上限額として適用されます。年収400万円の場合は、約2,800万円までなら可能でしょう。
Q3.車など他のローンがあると、住宅ローンは借りられない?
車のローンやクレジットカードの残債などがあっても、住宅ローンを借りることはできます。ただし、融資の限度額はその他のローンをすべて合わせた状態で計算されることになります。
たとえば年収400万円の場合、相場として7倍の2,800万円までを住宅ローンに活用できると考えられます。しかし車のローンが200万円残っているという場合は、この金額が差し引かれ、住宅ローンの限度額が2,600万円にまで下がってしまいます。
もう1つの目安として「年収の35%」を住宅ローン審査の上限として考えるというものがあります。この35%の中には住宅ローンだけでなく、車のローンの残債も含まれるため注意が必要です。
車などのローン残高が少ない場合は、住宅ローンの審査を受ける前に完済してしまうという手もあります。一方で支払いの遅延や延滞といった記録が残っていると、住宅ローンの審査に落ちる確率が高くなるため、この点にも注意しましょう。
Q4.住宅ローンは長めに組むのと短めに組むのはどちらがいい?
結論としては、フラット35などを利用して長めのローンを組み、余裕が生まれた場合に繰り上げ返済を行うことが得策です。住宅ローンを一度組んだ後に返済期間を延ばすことは不可能なので、まずは毎月の返済額を無理のない範囲に収めましょう。
35年間のローンを組んでも、年収が上がったりした場合には返済額を増やし、30年や25年という期間で完済を目指すことも可能です。反対に年収は減る可能性も考えられますので、最初から無理に返済のペースを速めることは推奨できません。
Q5.どの物件を購入したらいいか迷っており、相談に乗ってほしい
LIFULL HOME’Sでは「住まいの窓口」でアドバイザーが第三者の視点からご相談に乗ることが可能です。新築と中古のどちらがいいか、マンションと一戸建てのどちらを選ぶべきかといったご相談から、中古物件のリノベーションに関するご提案まで、すべてのサービスを無料で承っております。
金銭的な面では、住宅ローンのことをはじめ、見落としてしまいがちな諸費用も含めたアドバイスを行っています。提携している優秀なファイナンシャルプランナーなど専門家の紹介も無料で行っていますので、疑問やお悩みがあればどんなことでもご相談ください。
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