新型コロナウイルスの感染者確認で横浜港に停泊中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で、乗員乗客の体調悪化が相次いでいる。3711人のうちウイルス検査陽性は日に日に増えて130人を超え、感染規模は実態がつかめていない。事実上の隔離状態にある乗客からは、不足する医薬品や生活用品の確保、衛生環境の改善を求める声が上がっている。
10日午後、陸から見える船の側面には「オネガイ」「宅急便可」「放送アリ」などと、乗客が書いたとみられる布が掲げられていた。「各階の部屋の外は職員が待機し、時間外にドアを開けると注意される。監禁のような状態で、ストレスもある。なるべく早く出たい」と船内にいる神戸市の林栄太郎さん(79)。朝約1時間だけ許可されるデッキへの妻との外出が唯一の息抜きという。
「シーツ交換、室内清掃が、ほぼ1週間近くされていません」。10日、乗客で作る「緊急ネットワーク」が厚生労働省に船内の環境改善を求める要望書を提出した。電話取材に応じた代表の千田忠さんによると、乗客に38度台の熱が出ても、医師は部屋で検体(のどの拭い液)を取るだけで、治療がされていないという。「毎日救急車で患者が運ばれている。提供される情報は限定的で、不安は増している」と訴える。
厚労省は当初、感染の疑いがある人は273人と判断し、7日までにウイルス検査を終えた。しかし、その後も体調不良を訴える人が相次ぎ、そのたびに検査対象も拡大。厚労省関係者は「(感染者は)これからどんどん増える」と予測する。世界保健機関(WHO)で緊急事態対応を統括する医師は7日、船内で感染者が次々見つかり、待機期間が延びるのは「悪いサイクルだ」と指摘した。
新たに60人以上の陽性反応が確認されたが、感染者を受け入れる神奈川県では指定医療機関の病床が埋まりつつある。県の担当者は「(県内の受け入れは)限界が近い」と緊迫した様子で語った。
乗船者への支援で急がれるのが、糖尿病や高血圧など持病がある人の医薬品の確保だ。乗客は高齢者が多い。運航会社などが乗客から聞き取った必要な医薬品は、糖尿病薬のインスリンなど延べ1850人分に上るが、厚労省によると9日までに届けられたのは延べ750人分にとどまるという。同日時点で既に11人が、新型肺炎ではない病気によって下船している。【金秀蓮、池田直、二村祐士朗】
◇医療関係者「船内とどまるのは仕方ない」「エコノミークラス症候群に注意」
医療者は、船内の状況をどう見ているか。
富山県衛生研究所の大石和徳所長は「下船後に感染が確認された香港の男性からの感染だけでは説明できない。3次、4次感染が起きている可能性がある」と指摘する。ウイルスの潜伏期間は最大12・5日間とされるが、最も多いのは5日間前後。「5日から船内での隔離が始まったので、今後数日は新たな感染者が見つかることも考えられる」と話す。
一方、春木宏介・独協医大埼玉医療センター教授(感染症学)は、乗客全員が室内待機していれば「空調を通して感染する可能性は低い」と指摘し、一定の感染拡大対策は取れているとみる。下船して別の場所で待機するには受け入れ先確保の問題などがあり「潜伏期間が過ぎるまで、健康管理をしながら船内にとどめることは仕方がない」と話す。
狭い客室に長期間留め置かれると、エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)のリスクが高まる。予防法として、春木教授は「スクワットやストレッチ、歩行、ふくらはぎのマッサージなどをして、水分を多めに取ることが大切」と助言する。また、不安でうつ症状が出たり、孤独感や疎外感に苦しめられたりする恐れもあるため、勝田吉彰・関西福祉大教授(渡航医学)は高齢者でも使えるタブレット端末の配布を提案する。【小川祐希、御園生枝里】
2020-02-10 12:30:27Z
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