Monday, November 28, 2022

自分はいくら? 「年金の日」にサクッと確認する方法 - 日本経済新聞

来月に税制改正大綱発表を控え、個人の資産運用がらみの制度変更に注目が集まる。少額投資非課税制度(NISA、ニーサ)の非課税枠はどの程度拡充されるのか? 個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)の加入年齢は70歳まで延びるのか? 岸田文雄首相肝煎りの「資産所得倍増プラン」はもちろん気になるが、実際個人が自分ごととして資産形成と向き合う際、いの一番に押さえるべき数字はそこではない。それは……?

まず知るべきは「自分の年金額」

自分の年金額だ。将来あてにできる公的年金(基礎年金、厚生年金)の額次第でその他に自助努力で準備すべき額は当然変わる。大騒ぎになった「老後2000万円不足」はあくまで画一的なデータを用いた平均像の一例。実情は個々人で違う。あなたは今、自分の年金額をザックリでもいいので即答できるだろうか。

5万円? 自営業やフリーターの人を含む国民全員がもらえる基礎年金の現在の月平均額がそれよりちょっと多いくらい。約5.6万円だ。15万円? 会社員などが加入する厚生年金の平均が15万円弱の月14.6万円だ(令和2年度「厚生年金保険・国民年金事業の概況」より)。

「ねんきん定期便」は年1回誕生月に届く

さて自分は? そう考えた時、第一に当たるべき先は「ねんきん定期便」。年に1回、自分の誕生月に届く三つ折りの圧着はがきだ。今ではすっかりおなじみの存在になったが、2007年に「消えた年金記録問題」が勃発するまで国民はただ淡々と保険料を納め続けるだけで、もらい始めるまで自分の年金記録にアクセスしないのが普通だったとは、いやはや彼我の感だ。

ねんきん定期便には過去の加入期間と保険料の納付額、それに応じた将来の年金見込み額が載っている。50歳以上と未満でやや仕様が異なり、受給までまだ間がある若い人の定期便には「これまでの加入実績に応じた年金額」しか書いていない。25歳なら最長5年間収めた保険料だけで65歳以降にもらえる額を意味しているから非常に少ない。「やっぱり年金は当てにならない」と慌てないでほしい。将来の年金は将来の働き方に応じて自由自在に変わるものだ。

スマホで簡単シミュレーション

「今の会社に60歳まで勤めて普通に昇給したら」とか「45歳にFIRE(経済的自立と早期リタイア)してその後はフリーに」等々、大事なのは自分の選択の結果が年金にどう反映されるか知っておくことだ。変わる未来をスマートフォン1つでいつでもどこでも、ゲーム感覚で体感できる便利ツールが登場している。厚生労働省が4月から試験運用中の「公的年金シミュレーター」だ。今年4月以降に発行されたねんきん定期便が手元にある人は新たに加わった「年金見込額試算用二次元コード」をスマホカメラで読み取ってみよう(はがきにはQRコードが複数個あるので注意)。

飛んだ先のサイトで生年月日を入れ「試算する」を押す。即座に今の収入で60歳になるまで働いた場合、65歳以降にもらえる年金見込額が年額表示される。ビジュアルなグラフで見やすい上、素晴らしいのはグラフ下のスライドバーを自分で動かして簡単に将来のシミュレーションができる点だ。「今後の年収」や「就労完了年齢」、「受給開始年齢」を変え、時々刻々と年金額が変わる様を体感できる。

「ねんきんネット」よりはるかに簡単

さらに将来のライフプランを反映させ、働き方や暮らし方(自営業・フリーランス、パート・アルバイト、配偶者の扶養など)を変えて試算することも可能。「●歳から●歳までは専業主婦(夫)になって……」と妄想するのも楽しい。同様の機能はこれまでも日本年金機構が運営する「ねんきんネット」にもあったが、これがクセ者。基礎年金番号やアクセスキー、ユーザーIDなど様々な「番号」と格闘する必要があり、しかも見にくいとあって、残念ながら非常にハードルが高かった(一部、マイナポータル経由で若干簡単になったが……)。

厚労省は来年3月にQRコード付きねんきん定期便の発行が一巡するまで試験運用と位置づけて、その後の本格運用では民間の家計簿アプリなどと連動する青写真を描く。今の予想年金額は額面表示だがそこから税と社会保険料を差し引いた「手取り」の表示も検討しているという。物価高で節約志向が強まる折、「公的年金がこのくらいあるなら民間保険はこんなにいらないな」と月々の保険料節約にも賢く使えそうだ。

年金の変更点が相次いだ2022年も間もなく終わり

間もなく終えつつある2022年は年金の制度改正が相次ぎ実施に移された1年だった。4月には最長75歳までの受給開始繰り下げが可能になり、60歳代前半に働きながら年金を受け取る場合の減額基準も緩和された。10月以降、厚生年金の加入対象になるパート・アルバイトの範囲が広がり、今後も同様の流れが続く。年金は天から降ってくるものでなく自分の生きざまの集大成に他ならない。あす11月30日は「年金の日」。1130→イイミレイ→いい未来、を考えるため、まずはシミュレーションにアクセスしてみてはどうだろう。定期便が手元にない場合も、一手間増えはするがURL経由(https://nenkin-shisan.mhlw.go.jp/)で試せる。

山本由里(やまもと・ゆり)
1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年1月からマネー・エディター。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。

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