大野博
宮崎大学発ベンチャー企業「Smolt」が開発した黄金色をしたサクラマスの卵「つきみいくら」が来年1月末まで、ANA国際線ファーストクラスの機内食として提供されている。大学とANAグループが宮崎市の木花キャンパスで11月30日、記者会見した。
Smoltは、現在は宮崎大学大学院農学工学総合研究科の博士課程に在籍する上野賢さん(27)が2019年、内田勝久教授のもとで取り組んできた研究の成果を踏まえて起業した。川で生まれて海で育つ北日本のサクラマスの生き方を、五ケ瀬町にある淡水と延岡市の海水のいけすを行き来させることで再現し、卵の孵化(ふか)から成魚まで完全養殖。厳選したエサを与えることで、赤色ではなく黄金色を引き出すことに成功したという。
つきみいくらは、国際線ファーストクラス機内食の和食メニューの小鉢で、コハダの酢締めを添えた五色なますの上にトッピングされて提供される。ANAケータリングサービスの和食料理長、森誠剛さんは会見で「初めて見たとき、いちばんの印象は黄金色に輝く色目。ぷつぷつした食感も面白い。メニューをつくるうえで楽しい食材だ」と太鼓判を押した。
上野さんは岩手県の沿岸部、釜石市の出身。地元の岩手大学には当時、水産系のコースがなかったため、宮崎大を進学先に選んだ。中学3年のときに東日本大震災に遭遇した。「当時は目の前のことで精いっぱいだったけれど、大学に入って外から釜石を見た時に、復興に向かってもっと産業を発展させていかなければいけないと感じた」という。
国際線の機内食への採用について、上野さんは「地域のみなさんと連携して作ってきたものが世界に進出するのでわくわくしている」。近年、日本近海のサケ、マス類の漁獲高は減少しており、完全養殖による持続可能な食材づくりが一層注目を集めている。「Smoltの取り組みについてもっと多くの人たちに知ってもらい、卵に続いてサクラマスの身のほうの売り出しにも弾みをつけていきたい」と話した。(大野博)
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