自民、公明両党は2日、戦後の安全保障政策の大転換につながる敵基地攻撃能力(反撃能力)を保有することで合意し、政府が年内の改定を目指す国家安全保障戦略など3文書に盛り込まれることが固まった。両党の協議では、攻撃に踏み切るタイミングや対象が明示されず、歯止めが曖昧なまま日本は攻撃兵器の増強へと進むことになる。国民の代表である国会の議論も素通りし、野党からは「国会軽視だ」と批判の声が上がる。(川田篤志、市川千晴、佐藤裕介)
◆「時間かけて議論した」でも議題にしたのは3回
与党の実務者によるワーキングチーム座長を務める自民党の小野寺五典元防衛相は合意後、記者団に「戦後の日本の防衛体制の中で大きな変化になる。だからこそ時間をかけて慎重に議論した」と強調した。
だが、10月以降に9回開かれた実務者協議のうち、敵基地攻撃能力を議題にしたのは3回のみ。国際的な安保環境の厳しさを訴え、保有の必要性を強く主張する自民党に対して、公明党も理解を示し、あっさり合意したのが実情だ。
歯止めを曖昧にしたことで、多くの懸念は置き去りになった。
まず大きな焦点になるとみられた敵基地攻撃に踏み切るタイミング。与党合意では「明らかな兆候や国際情勢、相手の明示的な意図などを総合的に判断する」と従来の政府見解を適用することを決めた。相手が日本本土を狙ったミサイルを発射する前に、攻撃に「着手」したと判断すれば反撃できることになるが、国際法に反する先制攻撃と受け取られる可能性がある。
◆明確な基準なく、政府の判断任せ
もう一つの焦点だった攻撃対象も「必要最小限度の措置として許容されるかはその時々の判断」と抽象的。自民党幹部は軍事基地に限らず、政府への党提言で求めた司令部も含む「指揮統制機能等」も「当然含まれる」と解説する。明確な基準はなく、政府の判断に委ねられる。
敵基地攻撃能力を保有する政策変更に伴うリスクや課題も山積する。
中国や北朝鮮は数多くのミサイル発射拠点を備えており、全てをたたくことができなければ日本が報復されるのは避けられない。
しかも現代では、ミサイル発射台は車両など移動式が主流で、地点の把握は難しく、日本の攻撃が到達するまでに移動されれば破壊は困難とされる。
米国に打撃力を委ね、日本は国土防衛に徹する専守防衛が「有名無実化する」という指摘もある敵基地攻撃能力。社民党の福島瑞穂党首は2日の参院予算委員会で、1972年に当時の田中角栄首相が敵基地攻撃能力は「専守防衛に反する」と国会答弁したことを紹介し「国会で説明せずに決めるのは国会軽視で問題だ」と迫ったが、岸田文雄首相は「専守防衛は変えない」との主張を押し通した。
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