Tuesday, May 30, 2023

【世帯別試算】夫が亡くなったら、遺族年金はいくらもらえるの ... - mymo

万が一、夫や妻が亡くなったら…なんて想像したくもないですが、もしもの大きなリスクとして備えは考えておきたいものです。備えというと生命保険に加入することが浮かびますが、その前に知ってほしい制度があります。それが遺族年金です。ここでは、夫が亡くなった時の妻の年金についてみていきましょう。

年金には2種類ある

私たちが加入する公的年金は、20歳以上のすべての人が加入する「国民年金」と、会社員や公務員が加入する「厚生年金」があります。老後にもらう年金以外に、遺族になった時や一定の障害を負った時にも受け取ることができます。

今回のテーマとなる遺族年金の場合、国民年金から「遺族基礎年金」、厚生年金から「遺族厚生年金」が受け取れます。ただし、亡くなった人の年金の加入状況や家族構成などにより年金の種類や金額が異なり、人それぞれです。

亡くなった後に残された家族の生活保障といえば民間の生命保険の加入が頭に浮かぶ人も多いと思いますが、その前に公的な保障がいくら受け取れるかを知って、不足する分だけ民間保険の死亡保障で備えておくのが無駄のない方法です。ここでは、個人事業主の場合と会社員の場合について、受け取れる遺族年金の要件や対象を詳しく確認していきましょう。

遺族年金の対象者や要件は?

チェック
【画像出典元】「Pasuwan/Shutterstock.com」

個人事業主(国民年金に加入)の場合

まずは、亡くなった人が「個人事業主」の場合です。個人事業主が加入する年金制度は「国民年金」ですので、遺族は国民年金から「遺族基礎年金」を受け取ります。受給対象と要件は次の通りです。

受給対象となるのは、死亡した人に生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」です。つまり、「子のない配偶者」は遺族基礎年金の受給対象外となってしまいます。
また、ここでいう「子」とは、18歳となる年度の3月末までですので、高校卒業の年までと考えるとよいでしょう。なお、障害年金の障害等級1級または2級である子の場合は、20歳に到達するまでが受給期間となります。

遺族基礎年金が支給されるためには、亡くなった人が保険料をきちんと納めていなければなりません。ここでいう「きちんと」とは、死亡した日の前日までに加入期間の2/3以上年金保険料を納めている場合をいいます。大学に通っていて学生納付特例制度を申請し保険料の免除を受けた場合や、収入が一定以下となり免除や納付猶予制度の申請をした期間がある場合は、その期間も納付したとみなして計算できます。

なお、遺族基礎年金を受給できない子のない配偶者も、一定の要件を満たすと「寡婦年金」や「死亡一時金」が受け取れる場合があります。

会社員(厚生年金)の場合

次に、亡くなった人が「会社員(公務員を含む)」の場合です。会社員や公務員は「厚生年金」に加入しているので、遺族は「遺族厚生年金」を受け取れます。なお、会社員や公務員も国民年金の保険料を払っているため、遺族基礎年金も一緒に受け取れます。遺族厚生年金の受給対象と要件は次の通りです。

遺族厚生年金の受給対象者は、遺族基礎年金にくらべて範囲が広いのが特徴です。優先順位は上から順となるのが原則です。ただし、夫が亡くなった時に子のない妻が30歳未満の場合は受給期間が5年間と限定されているので注意が必要です。

また、夫、父母、祖父母が受給する場合は、故人の死亡当時に55歳以上であることが要件となり、受給開始は60歳からとなっています。ただし、子のある55歳以上の夫で、遺族基礎年金を受給できる場合は、60歳前でも特別に遺族厚生年金も受け取れるようになっています。

遺族年金はいくらもらえるのか

では、具体的に受け取れる金額はいくらでしょうか。確認していきましょう。

遺族基礎年金の受取額

遺族基礎年金は、子の人数によって受取額が決まっています。
「子のある配偶者」が受給者となる場合は、基本額79万5000円に、子の人数に応じて「子の加算額」が上乗せされます。子の加算額は、2人目までが一人につき22万8700円、3人目からは一人につき7万6200円です。

例えば、子が3人いる配偶者が受給する場合は、

(基本額)79万5000円+(第1子)22万8700円+(第2子)22万8700円+(第3子)7万6200円=132万8600円

が1年間の受取額ということになります。

子のみが受給する場合は、1人目の加算はなく、2人目以降について加算されます。
子が3人いて、子のみが受給する場合は下記の計算となります。

(基本額)79万5000円+(第2子)22万8700円+(第3子)7万6200円=109万9900円

子が受給する場合は、人数で均等に割った額をそれぞれ受け取ります。

遺族厚生年金の受取額

一方、遺族厚生年金は、会社員や公務員が亡くなった時に、遺族基礎年金に加えて支給されます。遺族基礎年金のように子の有無を問われないのが特徴です。

年金額は、亡くなるまでの厚生年金の加入期間やその間の収入によって異なります。これは、厚生年金の保険料が一律ではなく、収入に対して18.3%(労使折半)というように収入に比例して保険料を納めているからです。

遺族厚生年金は、厚生年金(報酬比例部分)の4分の3を受け取れます。目安をまとめていますので参考にしてください。

遺族厚生年金の具体的な計算方法は、次のようになります。

平成15年3月までの厚生年金は給与に対して納めていたのですが、平成15年4月以降は賞与に対しても厚生年金保険料がかかることになったことから計算式がA、Bと別に設けられています。

働き出して間もなく死亡したなど、「死亡した人の加入要件」が、上記1~3に該当し加入月数が300月に満たない場合は、300月加入したものとして計算することができます。

なお、下記の方法で計算して年金が多くなるときは、その額が適用されます。以下の計算は、従前額保障といい、平成6年の水準で標準報酬を再評価して計算したものです。年金制度は何度も改正され複雑ですので、まずは2タイプ(本来水準と従前額保障)の計算のうち多い方がもらえるという理解で十分です。

遺族年金はいつからいつまでもらえるのか

遺族年金は、亡くなった日の翌月からが支給対象です。実際は手続きに3カ月程度かかるため、最初はまとめて振り込まれるようになります。支給日は偶数月の15日です。

遺族基礎年金は、すべての子が18歳を迎えた年度の3月末(障害年金の障害等級1級または2級である子は20歳に到達)を迎えるまでもらえます。

遺族厚生年金は、受給対象者である限り基本的にずっと受け取れますが、配偶者が厚生年金に加入したことがあり、自身の老齢厚生年金をもらうようになると遺族厚生年金が減額されるなど一定の調整があることは押さえておきましょう。

なお、受給中に配偶者が再婚する、生計を共にするパートナーが出来て事実婚であるなどの場合は、遺族年金を受け取れなくなるので注意が必要です。

それでは、どのくらい年金が受け取れるのか。想定世帯別にシミュレーションをしてみましょう。

夫が亡くなるとどのくらい年金が増減するのか?世帯別シミュレーション

生計維持者の夫が亡くなった場合、遺族年金受給額はどれくらいになるのでしょう?いくつかの世帯例を挙げて計算してみます。

夫:個人事業主、妻:子ありのケース

【家族構成】
妻:40歳、第1子:10歳、第2子:8歳

【受け取れる遺族年金(1年間あたり)】
■第1子が18歳を迎える年度までの期間
・遺族基礎年金
79万5000円+(第1子)22万8700円+(第2子)22万8700円=125万2400円

■第1子が18歳以上になり、第2子が18歳を迎える年度までの期間
・遺族基礎年金
79万5000円+(第2子)22万8700円=102万3700円

■第2子が18歳以上になった場合
なし

よって、第1子が18歳まで125万2400円、それ以降、第2子が18歳まで102万3700円が受け取れる。

夫:個人事業主、妻:子なしのケース

【家族構成】
妻:40歳

【受け取れる遺族年金】
なし

ただし、一定の要件を満たした場合、寡婦年金または、死亡一時金が受け取れる可能性があります。

夫:会社員、32歳妻・子ありのケース

【家族構成】
妻:32歳、第1子:8歳、第2子:3歳
*夫の平均収入は月額40万円、厚生年金加入期間10年
*妻は、厚生年金の加入期間がなく、60歳まで40年間国民年金のみに加入すると想定

【受け取れる遺族年金(1年間あたり)】
■第1子が18歳を迎える年度までの期間
・遺族基礎年金
79万5000円+(第1子)22万8700円+(第2子)22万8700円=125万2400円 …①

・遺族厚生年金
上表より、49万3290円 …②

➀+②=174万5690円
よって、
第1子が18歳となるまでの11年間、毎年174万5690円を受け取れる。

■第1子が18歳以上になり、第2子が18歳を迎える年度までの期間
・遺族基礎年金
79万5000円+(第2子)22万8700円=102万3700円 …③

・遺族厚生年金
上表より、49万3290円 …④

➂+④=151万6990円
よって、
第1子18歳以降、第2子が18歳になるまでの5年間、毎年151万6990円を受け取れる。

■第2子が18歳以上になり、妻が65歳になるまでの期間
・遺族基礎年金
なし

・遺族厚生年金
上表より、49万3290円 …⑤

・中高齢寡婦加算
妻が受け取る遺族厚生年金には、40歳から65歳までの間、「中高齢寡婦加算」という加算給付があります。要件は、「夫が亡くなった時に40歳以上で生計を同一にしている子がない場合、または、子が対象外の年齢となり遺族基礎年金が支給されなくなった時」です。受け取れる額は年度によりやや異なりますが、2023年度は59万6300円です。今回はこの金額が一定と仮定して計算します。

中高齢寡婦加算=59万6300円 …⑥

⑤+⑥=108万9590円
よって、第2子が18歳以降(妻48歳)から、妻65歳までの17年間、毎年108万9590円が受け取れる。

■妻65歳以降
・遺族基礎年金
なし

・遺族厚生年金
上表より、49万3290円 …⑦

・妻自身の「老齢基礎年金」
79万5000円 …⑧
(※20~60歳まで未納期間がない場合の受取額)

⑦+⑧=128万8290円
よって、妻は65歳以降の一生涯、毎年128万8290円を受け取れる。

夫:会社員、妻:子なしのケース

【家族構成】
妻:42歳
*夫の平均収入は月額40万円、厚生年金加入期間30年
*妻は、厚生年金の加入期間がなく、60歳まで40年間国民年金のみに加入すると想定

【受け取れる遺族年金】
■妻が65歳まで
・遺族基礎年金
なし

・遺族厚生年金
上表より、59万1948円 …⑨

・中高齢寡婦加算
59万6300円 …⑩

⑨+⑩=118万8248円
よって、妻が65歳になるまでの23年間、毎年118万8248円が受け取れる。

■妻が65歳以降
・遺族基礎年金
なし

・遺族厚生年金
上表より、59万1948円 …⑪

・「妻自身」の老齢基礎年金
79万5000円 …⑫
(※20歳~60歳まで未納期間がない場合の受取額)

⑪+⑫=138万6948円
よって、妻65歳以降の一生涯、毎年138万6948円を受け取れる。

まとめ

貯金
【画像出典元】「Ground Picture/Shutterstock.com」

夫が死亡した場合の遺族年金について、これまでの内容をまとめます。

年金制度は複雑です。今回の解説では分かりやすくするために簡略化している部分があるため、詳しく知りたい方は年金事務所に確認しましょう。家族の一大事に生活を支えてくれるのが遺族年金です。まずは大まかに遺族年金のことを知って、生命保険に過不足があるようなら見直しましょう。 

遺族年金についてのQ&A

Q.会社員の妻(専業主婦)が死亡した時の遺族基礎年金はどうなりますか?

A.子がいる場合に遺族基礎年金が受け取れますが、いない場合はありません。

Q.公務員の夫が死亡した場合の遺族年金はどうなりますか?

A.公務員は基本的に、会社員の場合と同じですが、平成27年9月30日以前に死亡した場合は遺族共済年金として支給されています。

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