23/05/27
相続・税金・年金
老後に年金をもらうには、少なくとも10年国民年金保険料を払わなければなりません。ただし、国民年金保険料は本来40年払うものです。10年しか払っていなければ、もらえる年金額は少なくなります。
今回は、国民年金保険料を「10年だけ払った人」の年金額と、年金を増やす方法について説明します。
「10年だけ払った人」の年金はいくら?
国民年金には20歳から60歳までの40年(480か月)加入し、保険料を払う必要があります。40年間の保険料を全額払った人は、老齢基礎年金の満額受給が可能です。老齢基礎年金の金額は毎年改定されますが、2023年度(令和5年度)の67歳以下の方の年金額は満額で79万5000円(月額6万6250円)です。
以下、2023年度の年金額を基準に説明します。
●保険料を10年払った人の年金額は?
老齢基礎年金を受給するためには、国民年金保険料の納付期間が10年以上必要です。逆に言うと、10年保険料を払っていれば年金はもらえるということです。ただし、年金額は保険料を払った期間に比例して変わるため、10年しか年金を払っていない人は、40年払った人の年金額の4分の1となります。
「10年だけ払った人」の年金額は満額の4分の1である19万8750円(月額1万6562円)です。老齢基礎年金は満額でも決して多いとは言えませんが、4分の1となると月1万円台となり、かなり心細い金額となってしまいます。
「10年だけ払った人」でも年金がもっと多いケースもある
上で説明した「10年だけ払った人」は、残り30年間の国民年金保険料が未納扱いの人です。次のような人は、もう少し年金が多くなります。
●会社勤めした期間がある人
会社等に勤めていて厚生年金に加入していた期間がある人には、老齢基礎年金に加えて、老齢厚生年金も支給されます。厚生年金加入期間は、国民年金保険料の納付期間にもカウントされるため、老齢基礎年金も増えます。自分で国民年金保険料を払った期間は10年しかなくても、それとは別に厚生年金加入期間があれば、年金はもっと多くなります。
●全額免除・一部免除の承認を受けた期間がある人
国民年金保険料の免除申請をし、全額免除や一部免除の承認を受けた期間がある人です。全額免除・一部免除の承認を受けた期間については、納付期間にカウントされ、次のとおり年金額の一部が支給されます。
●国民年金保険料の免除の種類と年金受給額の割合
筆者作成
「10年だけ払った人」が繰り上げ受給・繰り下げ受給をしたらどうなる?
年金受給開始は原則として65歳からです。ただし、60歳以上65歳未満でもらい始める繰り上げ受給や、66歳以降でもらい始める繰り下げ受給も可能です。繰り上げ受給を選択した場合には年金額が減り、繰り下げ受給を選択した場合には年金額が増える仕組みになっています。
「10年だけ払った人」の年金額が、繰り上げや繰り下げによりどう変わるかをみてみましょう。
●繰り上げ受給の場合
1962年(昭和37年)4月2日以降生まれの人の場合、1か月繰り上げるごとに0.4%年金額が減額します。60歳から64歳で受給開始した場合、「10年だけ払った人」の年金額は次のとおりです。
【10年だけ払った人の年金額(繰り上げ受給)】
筆者作成
「10年だけ払った人」が繰り上げ受給を選択した場合、1年繰り上げるごとに9540円年金が減ります。60歳まで繰り上げた場合の年金額は15万1050円(月額1万2587円)となります。ただでさえ少ない年金が、さらに少なくなってしまうことがわかります。
●繰り下げ受給の場合
1941年(昭和16年)4月2日以降生まれの人の場合、65歳に達した月から1か月繰り下げるごとに0.7%年金額が増額します。70歳まで繰り下げた場合には42.0%の増額です。
なお、1952年(昭和27年)4月2日以降生まれの人は、2022年(令和4年)4月より75歳までの繰り下げが可能になりました。75歳まで繰り下げた場合の増額率は84.0%となります。
「10年だけ払った人」が繰り下げ受給を選択した場合の年金額の変化をみてみましょう。
【10年だけ払った人の年金額(繰り下げ受給)】
筆者作成
「10年だけ払った人」の場合、1年繰り下げるごとに1万6695円年金額が増えます。とはいえ、75歳まで最大限の繰り下げをしても、年金額は月3万円程度にしかなりません。
繰り下げ受給で年金額を少し増やせることは確かですが、老後資金はまだまだ不足するでしょう。
「10年だけ払った人」も年金を増やす方法はある!
60歳になった時点で年金を払った期間が10年しかない場合、繰り下げ受給をすれば年金を増やせます。年金を増やす方法はそれだけではありません。「10年だけ払った人」は、以下のような方法で年金を増やせないか考えてみましょう。
●年金を増やす方法1:追納する
国民年金保険料は、本来の納付期限から2年以内なら追納が可能です。免除や納付猶予の承認を受けている期間については、10年以内の追納が可能です。追納可能な保険料が残っていれば、払ってしまいましょう。
1か月保険料を追納した場合、
79万5000円×1/480(か月)=1656.25
となり、1656円年金額を増やせます。
●年金を増やす方法2:60歳以降も国民年金に任意加入する
国民年金に加入して保険料を納付できる期間は、原則60歳までです。しかし、国民年金保険料の納付月数が480か月未満の人は、60歳から65歳の間も国民年金に任意加入して保険料を払うことができます。
60歳から65歳までの5年間国民年金に任意加入した場合、
79万5000円×5/40(年)=9万9375円
となり、約10万円年金額を増やせます。
●年金を増やす方法3:付加年金に入る
付加年金とは、国民年金保険料に400円プラスして納付することにより、老齢基礎年金を増やせる制度です。付加年金に入ると、「200円×付加保険料納付月数」の年金を上乗せできます。
60歳以降国民年金に任意加入している期間中も、付加年金に入れます。60歳から65歳までの5年付加年金に入ると、1万2000円年金額が増えます。
●年金を増やす方法4:国民年金基金に加入する
国民年金基金は、国民年金の第1号被保険者(自営業者、フリーランス等)を対象とした年金制度です。60歳以降国民年金に任意加入している人も、国民年金基金に加入して上乗せする年金を用意できます。
国民年金基金は口数単位で加入しますが、1口目は65歳から生涯受け取れる終身年金です。受け取れる年金額は、自分が選んだプランや掛金によって変わります。
なお、国民年金基金と付加年金の同時加入はできないので、どちらかを選ぶ必要があります。
●年金を増やす方法5:働いて厚生年金に加入する
厚生年金には70歳まで加入できます。60歳以降も会社などで働く場合、条件をみたせば厚生年金に加入できるでしょう。厚生年金に加入して厚生年金保険料を払えば、年金額を増やせます。
まとめ
60歳までに国民年金保険料を10年しか払っていない人は、受け取れる年金額がかなり少なくなってしまいます。しかし、60歳を過ぎてからでも、年金を増やす方法がないわけではありません。できる方法を組み合わせて、年金を少しでも増やす工夫をするのがおすすめです。
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森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
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