毎月一定額を金融商品の購入に充てる積立投資は、将来まとまったお金を作るのに向いた資産形成の方法です。定期的に購入することでリスクを抑えた運用が可能ですが、目標額まで着実に貯めるには、毎月の掛金や投資対象の金融商品を適切に設定するなど、各ポイントをしっかりと押さえることが重要です。
そこでこの記事では、積立投資の特徴やサービスの種類、掛金の設定の仕方について詳しく解説します。マイホームの頭金や、老後の生活の蓄え、子供の進学費用や結婚費用などのお金を準備していきたい方は、参考にしてみてください。
目次
- 積立投資とは
1-1.積立投資のメリット
1-2.積立投資のデメリット - 積立投資サービスの種類
2-1.株式の積立タイプ
2-2.投資信託の積立タイプ - 積立投資における毎月の掛金のおすすめ設定方法
3-1.積立投資の目標額や掛金等の考え方
3-2.金融商品や掛金の絞り込み方 - 積立投資を始める際の注意点
- まとめ
1 積立投資とは
積立投資は、まとまった資金を一度に投資するのではなく、一定額を中長期的に継続的して投資する方法です。投資対象は株式や投資信託などですが、毎月・毎週などの一定期間で少額ずつ購入することで、リスクを抑えながら将来必要な資金を着実に形成していく運用方法となります。
投資商品の価格は市場の変化に応じて変動するため、本来中長期にわたって資金作りを行う場合、リスク対策が重要になります。しかし、積立投資では定期的・定量的に金融商品を購入することで、時価が高い時には少なく購入し、低い時には多く購入することになるので、購入価格が平準化され、リスクを抑えた長期投資が可能になるという特徴があります。
1-1 積立投資のメリット
積立投資の具体的なメリットを確認してみましょう。
少額から投資できる
金融機関や証券会社によっては100円から積立可能なサービスを提供している企業もあるなど、少額から行えるのが特徴です。目標額を達成するには毎月の掛金を適切に設定する必要はありますが、まとまったお金を一度に投資する必要はないため、家計に負担の少ない範囲で着実に資金を作ることが可能です。
投資に時間を取られない
通常の株式投資などでは、市況や投資対象に関する情報を随時集めて分析するといった手間がかかる上、ある程度の専門知識が求められます。
一方、積立投資サービスの多くは毎月・毎週など決まったタイミングで自動的に金融商品を買い付けてくれるため、手間がほとんどかかりません。難しい投資知識なども必要ないため、初心者の方でも行いやすいのが特徴です。
投資期間の分散でリスクが低減する
積立投資は、一定時に一定額を購入し続けるという「ドルコスト平均法」によるリスク低減効果が期待できます。
例えば、10,000円を1口1,000円の投資信託に10口まとめて投資する場合と、毎月2,000円を5カ月に渡って投資する場合、結果は以下のようになります。
投資タイプ | 1カ月目 | 2カ月目 | 3カ月目 | 4カ月目 | 5カ月目 | 購入合計 |
---|---|---|---|---|---|---|
1口当りの価格 | 1,000円 | 1,250円 | 500円 | 800円 | 1,250円 | – |
1括購入(口) | 10口 | 0 | 0 | 0 | 0 | 10口 |
毎月購入(口) | 2口 | 1.6口 | 4口 | 2.5口 | 1.6口 | 11.7口 |
金融商品は市場の変動によってその価格も上下します。このケースでは3カ月目と4カ月目では大幅下落となっており、一括投資では10口の購入で終わるのに対して、毎月の積立では、購入口数が基準価額の変動に応じて変わるので、結果的に11.7口(平均購入単価:約855円)の購入となっています。
このように同じ金額を使った投資でも、積立投資では最終的な保有口数の増加や、平均購入単価を引き下げる効果が期待できます(価格変動の状況次第では逆になることもあり得ます)。
1-2 積立投資のデメリット
一方、積立投資のデメリットとしては次の特徴が挙げられます。
短期で大きなリターンは狙いにくい
リターンの大きさは基本的に投資額の大きさに比例するため、少額の積立投資で短期的に大きな利益を望むのは困難です。
例えば、10万円を一括で投資信託に投資した場合と毎月1万円を積立投資した場合で、基準価額(投信の売買価格)が20%アップすると、一括では10万円×0.2=2万円の含み益、積立投資では1万円×0.2=2,000円程度の含み益となります。
積立投資は、株式投資の信用取引やFXのようにレバレッジを効かせた投資(=少ない元手でハイリターンを狙うこと)ではない点に留意しましょう。
手数料などのコスト負担が大きくなりやすい
投資では金融商品の売買に関わる手数料のほか、運用手数料や解約手数料などが発生します。特に積立投資は毎月購入や長期運用となるため、通常の投資よりもコストが大きくなりやすいのが特徴です。そのため、販売手数料無料や信託報酬(運用や管理にかかる諸費用)の安い商品を選ぶことも大切です。
2 積立投資サービスの種類
積立投資サービスの種類は、投資対象を「株式とするタイプ」と「投資信託とするタイプ」に大きく分けることができます。
2-1 株式の積立タイプ
株式で積み立てるタイプとしては、「るいとう(株式累積投資)」が代表的です。「るいとう」は毎月一定額で株式を持続的に購入していく方法で、基本的に投資金額は1銘柄につき1万円以上1,000円単位かつ月間100万円未満で設定します。通常の取引単位の株式投資に比べて、投資額が少額で済み、手軽に始められるのが特徴です。
また、取引条件が厳格に規定されていない自由度の高い株式の積立投資も提供されています。例えば、SMBC日興証券の「金額・株数指定取引(キンカブ)の定期定額買付」は、東証の主な株式銘柄を100円から金額指定や株数指定で定期的に購入することができます。
2-2 投資信託の積立タイプ
投信積立は、毎月・毎週など定期的に一定金額で投資信託を購入し続ける投資サービスです。各証券会社の商品によって毎月の最少投資額は異なりますが、安いものでは毎月100円から積み立てられるサービスもあります。
また、ETF(金融証券取引所に上場している投資信託)を対象とした積立タイプもあります。特に投資支援ツールとして人気のロボアドバイザーなどでは国内外のETFを投資対象としているタイプが主流です。
このほか、投資家から資金を集めオフィスビルや商業施設などへ投資し、その収益を投資家に分配する投資商品「REIT」も人気です。REITは不動産信託投資のことで、REITを投資対象とする積立投資も提供されており、中には100円から可能なタイプもあります。
なお、長期的な少額の積立投資で利用したい制度が、2018年からスタートしている「つみたてNISA」です。つみたてNISAとは、少額資金で長期の積立投資を行い、将来の資産形成を支援する国の税制優遇制度のことで、毎年40万円の新規投資額が非課税投資枠として設けられ、最長20年間・最大800万円までの投資信託で得た利益が課税されません。
3 積立投資における毎月の掛金のおすすめ設定方法
長期的な積立では、毎月の給料などの収入額に基づいて掛金を適切に設定することが大切です。ここではそのポイントを見ていきましょう。
3-1 積立投資の目標額や掛金等の考え方
将来の必要資金を作っていくには、まず、目標額を設定しその実現に必要な金融商品や投資額(掛金)などを検討していきます。具体的には、「何%の利回りの商品」で「毎月いくらの掛金を何年間積立投資すれば目標額が達成できるか」を検討します。
例えば、15年後に必要になる資金を1,000万円と設定します。下表は、3種類の利回りごとの金融商品と、毎月の掛金ごとに15年間積立投資した場合の積立合計額を示したシミュレーションです。
15年後の積立合計金額
毎月の掛金 | 利回り3% | 利回り4% | 利回り5% |
---|---|---|---|
月1万円の場合 | 2,269,727円 | 2,460,905円 | 2,672,889円 |
月2.5万円の場合 | 5,674,317円 | 6,152,262円 | 6,682,224円 |
月3万円の場合 | 6,809,181円 | 7,382,715円 | 8,018,668円 |
月4万円の場合 | 9,078,908円 | 9,843,620円 | 10,691,558円 |
利回りはあくまで想定となるため、経済環境や市場の変動によっては、この結果を上回ることも下回ることもありますが、このシミュレーションのうち、15年後の目標金額1,000万円に到達できるケースは、「毎月4万円の掛け金」で「年4%」か「5%」の金融商品となります。
なお、金融庁の「資産運用シミュレーション」を利用すると、将来の目標額を達成するために必要な毎月の掛金と、想定利回りを簡易的に調べることができます。
3-2 金融商品や掛金の絞り込み方
投資に回す資金は、毎月の手取りの世帯収入から生活費等を除いた余裕資金から出すのが基本です。しかし、余裕資金の全額を投資に回すと娯楽等に回すお金が無くなるので、ある程度は残す必要もあるでしょう。
例えば、毎月の手取り収入が43万円、食費・住居費・水道光熱費・通信費・被服費・教育費・保険医療費・雑費等の生活費が38万円とすると、残りの余裕資金は5万円程度になります。この場合、投資に4万円、その他(預金や娯楽等)1万円といった配分が候補になるでしょう。
次に金融商品の選び方についてです。投資対象にもよりますが、リターンとリスクは外国株式→国内株式→外国債券→国内債券の順に小さくなります。さらに、外国株式・債券は新興国や先進国にも分けられます。
積立投信を提供している金融機関や証券会社では、積立投資向きのファンドを用意しています。各ファンドの目論見書を個別にチェックして選んでも良いのですが、初心者の方は手数料の安さや販売件数、騰落率といった各ランキングを参考に選ぶのもおすすめです。
4 積立投資を始める際の注意点
積立投資ではリスクとリターンのバランスを考慮することが大切です。例えば、新興国株式を中心としたハイリスク・ハイリターンの商品で長期的に運用するのは、あまりおすすめできません。
投資では高利回りの商品のみに投資資金を集中させるとリスクも大きくなるので、投資対象を分散させてリスクを抑えるのが基本です。例えば、毎月の掛け金のうち半分をリスクの低い債券を中心とした商品に投資し、残りをリターンの期待できる海外株式や国内株式の商品へ配分するといった方法を検討することも大切です。
また、積立投資にもリスクは伴うため、必要資金の全額を積立投資でまかなうのではなく、できれば他の調達手段も検討しましょう。
例えば、将来の必要資金が1,000万円の場合、積立投資で700万円、定期預金で300万円などの配分で資金作りを検討するのもおすすめです。積立投資での目標額を下げれば、リスクの低い商品を選ぶ選択肢も広がります。
まとめ
積立投資は将来の資産作りに効果的な方法の一つですが、目標額を確保するためには毎月の掛金の設定が重要になります。毎月の掛金額は、目標額、投資期間、商品の利回りから毎月の収入額を参考に、余裕資金の範囲内で設定するのが現実的でリスクの低い方法です。
掛金をあまり大きくすると生活費を圧迫することにもなりかねないので、いくら積み立てるかは慎重に検討しましょう。
HEDGE GUIDE 編集部 投資信託チーム
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