Saturday, March 19, 2022

老後資金はいくら貯めるべきか?必要な貯金の目安と対策を紹介 - ZUU online

「人生100年時代」という言葉が囁かれるようになり、これからのライフプランの見直しを図っている方もいるだろう。充実した老後を過ごすためにも、老後資金はしっかり確保しておきたい。しかしながら、実際のところ老後にはどの程度の資産が必要なのだろうか。

老後資金の目安

今から数年前、「老後資金2,000万円問題」が話題になったことを覚えている方も少なくないのではないだろうか。これは2019年、金融庁の金融審議会 市場ワーキング・グループによる「高齢社会における資産形成・管理」という報告書において「30年で約2,000万円の取崩しが必要になる」と記載されたことに起因している。

ちなみに「老後」が何歳からの人生を指すのか明確な定義はないが、公益社団法人生命保険文化センターは「経済的な側面から、公的年金や退職金以外に準備した資金を生活費として使いはじめる年齢を老後生活の開始時期とする見方もある」とし、独自調査によってその平均年齢を「65.9歳」としている。2013年の「高齢者雇用安定法」改訂によって2025年4月からは希望者全員の65歳までの雇用が義務化されることも踏まえ、ここでは老後を「65歳以降」と定義する。

「高齢社会における資産形成・管理」の報告書では、老後生活において2,000万円の取崩しが必要になるとした根拠として、総務省の「家計調査」(2017年)における「高齢夫婦無職世帯の家計収支」を取り上げている(※ここでの「高齢夫婦無職世帯」は夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯を指す)。

同調査によると、該当世帯の実収入は月額20万9,198円、非消費支出と消費支出を合わせた額は月額26万3,717万円となっている。つまり、毎月5万4,519円が不足する計算だ。

これを「毎月約5万5,000円の赤字」と概算し、老後生活を30年間送ったと仮定した場合は以下のとおりである。

月額5万5,000円×12カ月×30年間=1,980万円

これが「老後資金として2,000万円が必要になる」と解釈され、大きな話題になったのだ。

この報告書は麻生太郎金融担当相(当時)から受け取りを拒否され、後に撤回されることになった。確かに「2,000万円」は試算した数字であり、全員に当てはまるものではない。それでも、老後の生活やその資金について考えるきっかけを与えたという点においては、意義のあるものだったと言える。

この「家計調査」は定期的に行われており、最新版となる2020年の調査では、65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の支出は消費支出、非消費支出を合わせて月額25万5,550円と算出されている。

厚生労働省による「令和2年簡易生命表」の「主な年齢の平均余命」によると、65歳男性の平均余命は20.05年、65歳女性の場合は24.91年だ。65歳で定年を迎えた夫婦が少なくとも20年間、ともに人生を歩むと仮定すると以下のようになる。

月額25万5,550円×12カ月×20年間=6,133万2,000円

結果、6,000万円以上が必要になるということになる。

一方、65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)の支出は、消費支出、非消費支出合わせて14万4,687円となっている。こちらも20年間で計算すると、以下のとおりだ。

月額14万4,687円×12カ月×20年間=3,472万4,880円

これを見ると3,500万円近くがかかる計算になる。85歳までに夫婦で6,000万円以上、独身だと3,500万円近くというのが老後資金の目安になる。

ただし、これらの金額は「これだけあれば安心・十分」というものではない。急な病気で入院や療養が必要になったり、高齢者施設に入居することになったりするケースも考えられ、その場合は出費が多くなるだろう。また、自宅の建て替えやリフォームをする場合にはまとまった資金が必要になるだろうし、趣味を楽しむためのお金も確保しておきたい。もちろん85歳より長生きすれば、より多くの資金が必要になる。

そう考えると、上記の金額は老後資金の「最低限の目安」であり、上積みできるようであれば可能な限り上積みしておいたほうがいいというのが実際のところだろう。

持ち家と賃貸住宅、どちらがお得か

2020年の「家計調査」には、「二人以上の世帯のうち65歳以上の無職世帯」の持ち家率は平均93.1%というデータがある。つまり、65歳以上で老後生活を送っている世帯の大半は自分たちの持ち家で生活していることを意味している。

こうした持ち家は、ローンを組んで購入するのが一般的だろう。国土交通省 住宅局による「令和元年度 住宅市場動向調査報告書」によると、注文住宅や分譲戸建住宅、分譲マンション、中古戸建て住宅は「30歳代」で初めて取得するケースが最も多い。また、住宅金融支援機構の「2020年度 住宅ローン貸出動向調査」では、住宅ローンの貸出期間は平均27年となっている。

つまり、通常の会社員が30歳前後でローンを組み、マイホームを購入した場合は、定年を迎える頃にはローンを完済している計算になる。ただし、購入時期が遅くなるケースや、30年から35年のローンを組むケースもあるだろうし、住み替えのためにローンを組み直すことも考えられる。また、大規模なリフォームに着手し、そのローンが上乗せされる可能性もある。そうなると老後生活を送る中でもローン返済が続いており、家計を大きく圧迫することも考えられるだろう。

賃貸住宅に住む場合も同様で、家賃の支出が家計を圧迫することになる。ただし、子どもたちが独立し、夫婦だけで老後生活を送るという場合は、それまで家族で暮らしていた住宅から手頃な広さの賃貸住宅に移り住む、という選択肢もある。都心部から地方に移住して家賃の額を抑えることもできるだろう。いずれにしても、賃料の高い物件で老後生活を送り続けるのは難しいと言えるかもしれない。

公的年金の受給額

老後生活に数千万円が必要になるといっても、収入がないわけではない。2020年の「家計調査」を見ると、65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)には25万6,660円、65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)には13万6,964円の実収入があるという。そして、前者は85.7%にあたる21万9,976円、後者は89.0%にあたる12万1,942円が「社会保障給付」となっている。この「社会保障給付」は、老齢基礎年金や老齢厚生年金などの公的年金による収入を指す。

老齢基礎年金は、日本国内在住の20歳以上60歳未満の方全員が加入し、納付する「国民年金」の納付月数に応じて65歳から支給される。自営業者や農業・漁業などに従事している方とその配偶者は、この国民年金を自ら納付する。

一方の老齢厚生年金は、株式会社などの法人や公務員として勤務する給与所得者が対象で、「厚生年金」の納付総額に応じて65歳から支給される。その金額は、月給やボーナスの額から算出する「標準報酬月額」や「標準賞与額」に18.3%の保険料率をかけた金額となる。

なお、厚生年金は事業主が半額を負担し、残りの半額は給与から差し引かれる形で納付されるため、被保険者が自分で納付手続きをする必要はない。また、被保険者本人とその配偶者の国民年金納付分も厚生年金から拠出される。

つまり、国民年金を自ら納付している方とその配偶者は65歳以上になると老齢基礎年金のみを、厚生年金を納付している方は65歳以上になると老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を受給できることになる。

受給できる金額は国民年金、厚生年金の納入額によって異なる。厚生労働省は2022年1月22日、年金の月額を従来から0.4%引き下げると発表した。そこで示された年金額は以下のとおりだ。

老齢基礎年金(満額、1人分):6万4,816円
厚生年金(夫婦2人分):21万9,593円

(※厚生年金は老齢厚生年金と夫婦2人分の満額分の老齢基礎年金の合計額)

この厚生年金の金額について、厚生労働省は「平均的な収入で40年間、就業し、65歳から受け取り始める年金の給与水準」としている。「平均的な収入」については、賞与を含む月額換算の平均標準報酬を43.9万円と算出している。

年金受給額を増やすには

老齢基礎年金と老齢厚生年金の受給額は、国民年金、厚生年金の納付期間と金額(厚生年金のみ。国民年金は全員が一定)により決まる。よって、受給額を増やすためには国民年金、厚生年金の納付額を増やすことが第一の条件となる。

国民年金は20歳以上60歳未満に納付義務がある。年にして40年間、月にして480カ月間で、2021年度は月額1万6,610円となっている。この期間中に漏れなく国民年金を納付することで、満額を受け取れるようになる。

しかし国民年金には、大学や専門学校などに通っており、本人の前年所得が基準以下の場合に納付の猶予を受けられる「学生納付特例制度」などの制度がある。これはあくまで「猶予」であり、就業などで経済的な余裕ができてから必要額を追納すれば満額を受け取ることができるのだが、この猶予分が未納のままだと、老齢基礎年金の受取額は減ってしまう。

そのため、満額を受給するには、まずは480カ月分の国民年金を納付する必要がある。学生納付特例制度の活用などで未加入期間がある場合、60歳から65歳の間に任意加入できる「高齢任意加入」を利用することで、満額に近い受給を目指す方法もある。

また、国民年金には厚生年金に加入していない自営業者やフリーランス等の方を対象とした「付加保険」や「国民年金基金」という制度がある。

付加保険は、国民年金の保険料に月額400円を上乗せして納めることで、老齢基礎年金に「付加年金」が上乗せされて支給される制度である。付加年金の年金額は「200円×付加保険料納付月数」で計算される。

仮に40年間(480カ月間)、付加保険料を納付し続けた場合、1年間で200円×480カ月=9万6,000円が老齢基礎年金に上乗せされる。月額にすると8,000円だ。ちなみに、納付した付加保険料は年金を2年間、受給することで全額を回収できる計算になる。

国民年金基金は、従来の国民年金に掛金を上乗せして納付することで、受け取る年金額を増やす制度だ。複数のプランがあり、掛金の月額は選択した給付の型や加入口数、加入時の年齢、性別によって、月額6万8,000円以内で選ぶことができる。加入後は自分の都合で脱退することができず、60歳未満で加入した場合、掛金は59歳11カ月まで納付し続けなければいけないので注意が必要だが、年金は65歳から終身で受け取ることができる。また、国民年金基金には付加保険が含まれているため、付加保険と国民年金基金を併用することはできない。

いずれにしても、この両制度は自営業者やフリーランス等のためのものなので、厚生年金の納付者は利用することができない。老齢基礎年金の受給額を増やす方法として誰もが利用できるのは「年金の繰り下げ受給」という制度だ。

これは、本来なら65歳から受給できる老齢年金を66歳以降70歳までの間に繰り下げて請求するもので、いつまで繰り下げるかによって段階的に受給額を増額させることができる。増額率は「繰り下げ月数×0.7%」で計算され、最大で42.0%となる。

この繰り下げ受給制度は老齢基礎年金だけでなく、老齢厚生年金にも適用できる(昭和17年4月2日以後に生まれた方などが対象)。また、2022年4月以降に70歳を迎える人は、繰り下げ受給による年金開始時期を75歳まで引き伸ばすことができる。その場合、増額率は最大で84.0%となる。

この制度を活用すれば、実際に受給がスタートした時の年金の月額を大幅に増やすことができる。ただし、なにぶん高齢になってからのことなので確実に受給できる保証はなく、また実際の受給期間を長くする、つまり長生きをしないと、65歳から受給を開始した場合に比べて総額が低くなってしまう可能性もある。

年金の受給額を増やすのに最も有効的な手段は、厚生年金の納付額を増やすことだ。具体的には、企業の社員や公務員として可能な限り長い間働き、給料や賞与の額をアップさせることである。

厚生年金は常時従業員を使用する会社に勤務した場合に加入義務が生じる。年齢の下限はないため、未成年であっても加入できる。そして、会社勤めをしている限り、70歳までは加入していなければならない。つまり、50年以上にわたって納付し続けるケースもあるということだ。納付期間が長ければそれだけ納付額が増え、翻って受給額が増えるということになる。

また、厚生年金の納付額は報酬月額に準じた標準報酬額や標準賞与額によって決まる。2020年9月以降、この額が最も高いのは「32等級」の月額65万円で、これは実際の報酬月額(給与額)が63万5,000円以上の場合が該当し、納入金額は18.3%をかけて11万8,950円、個人負担分はこれを折半した5万9,475円となる。

50年以上にわたる厚生年金の納付可能期間のうち、この5万9,475円を可能な限り長期間、納め続ければ、必然的に老齢厚生年金の受給額は増えるということになるのだ。

充実した老後を送るには

これまで紹介してきたとおり、老後生活は年金が貴重な収入源となる。また、会社員や公務員の場合は、定年を迎えた時に退職金を受け取ることができる。金額は勤め先や就業期間によって変動するが、ある程度、まとまった金額が手に入るだろう。それまでの蓄えと退職金が、老後生活における貴重な資金源となり、そこに年金を足しながら生活することになる。その中で充実した老後生活を送るにはどうすればいいのだろうか。

派手な浪費は控える

自由な時間を手に入れたのだから、老後は今までできなかったことにチャレンジしたいと考える方もいるだろう。また、退職金の金額が大きいと、気が大きくなって浪費してしまうこともあるかもしれない。だが、働いていた頃に比べて収入が少なくなることもあるため、派手な浪費は控えたほうが無難だ。毎月の収入と支出の額を計算し、自分たちの蓄えの中からどれぐらいの金額を捻出しなければいけないのかを見極めたうえで、余裕を持ったお金の使い方をしたほうがいいだろう。

仕事以外の繋がりを持つ

定年を迎えて退職した後は、それまで付き合いのあった相手との交流が希薄になり、外出する機会も少なくなりがちだ。この状態が続くと生活に張り合いがなくなり、また認知症の発症のしやすさにも繋がりかねない。こうした状況を解消するためにも、地域社会や地元のコミュニティーとの繋がりを確保し、維持したほうがいいだろう。町内会や自治会、老人会などの集まりやデイサービスの利用、シルバー人材センターやボランティア活動などに参加し、社会との繋がりを持つとともに、日々の生活に刺激を与えることが望ましい。

お金のかからない趣味を持つ

派手な浪費を控えることにも通じるが、趣味にお金をかけ過ぎないように注意する必要がある。趣味を持つこと自体は悪いことではなく、むしろ生活に張りが出たり、健康の維持に繋がったりするが、そこでの費用が日常生活に影響を与えるようでは本末転倒だ。

コミュニティー内にはシニア向けのサークル活動をしている団体があり、そこで趣味を見つけることもできるだろう。また、園芸やガーデニング、手芸など自宅でできるものもある。脳トレ系やパズル系のビデオゲームやアプリゲームなども気軽にできる趣味といえるだろう。

老後資金を貯める方法

余裕のある老後生活を送るには、相応の老後資金を働いているうちから準備しておく必要がある。自力でできる方法としては、地道に貯金する方法がある。生活費を見直して節約できる部分は削り、浮いた分を貯蓄に回す。長年続けていけば、ある程度の資金を貯めることはできるだろう。また、今は転職によるキャリアアップや副業をすることも一般的になりつつあり、これらで収入が増えた分を貯蓄に回す方法もある。

今の日本は「超低金利時代」のため、預貯金による利息で資産を増やすのは非常に難しい。そこで、投資や資産運用に回すことで資産を増やす方法もある。専門的な知識が必要であり、また元本が保証されない点は考慮に入れる必要があるものの、資金に余裕があればチャレンジしてみてもいいだろう。

まとめ

子どもたちが独立し、自宅のローンも払い終わり、定年を迎えて退職金も手にすれば、穏やかな老後生活を送れそうなイメージはあるだろう。しかし、定年後の人生は意外に長く、それなりの資金が必要になるため、「悠々自適な老後生活」を送るのが難しい側面もある。不安のない老後生活を送るためには、早めの準備が必要だ。

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