Tuesday, December 21, 2021

控除額はいくら変わる? 住宅ローン減税の改正内容を徹底解説《楽待新聞》 - ニュース・コラム - Y!ファイナンス - Yahoo!ファイナンス

今月10日、自民・公明の両党は2022年度の税制改正大綱を決定。住宅ローン減税の見直しについても発表された。

内容を確認すると、住宅ローン減税の控除率は縮小される一方で、控除期間は延長されている。このあたりについて、さまざまなメディアで改正案について報道されているが、実際のところ改正内容について、よく理解できていない人もいるのではないだろうか。

そこで、今回はワンルームマンション投資の収支損益計算を得意とするファイナンシャルプランナーで、YouTuberとしても活躍する関根克直氏に、住宅ローンの改正案について解説してもらった。その内容を動画と記事でお伝えする。

■目次

1. これまでの住宅ローン減税
2. 住宅ローン減税はどう変わる?
3. 控除額はいくら変わるのか
4. 中間層への影響は少ない?
5. 中古物件の控除額も減少

■これまでの住宅ローン減税

そもそも住宅ローン減税とは、「住宅ローンを組んで住宅を購入する人は大変だろうから、住宅ローンで支払っている利息の一部を税金から控除しましょう」という考え方から始まっています。

これまでの住宅ローン減税の控除率は、借入している住宅ローンの年末残高の1%で、控除額は年間最大40万円。また控除を受けられる期間は10年間でした。

しかし、昨今の住宅ローンは借入金利が下がってきており、今では1%以下で借りられることも珍しくありません。そのため、例えば支払う利息が借入額の0.5%であるのに対して、受けることができる住宅ローン減税は年末残高の1%と、もらえるほうが多い「逆ザヤ」が発生していました。

その結果、住宅ローンを利用して購入した方が得になるため、自己資金があるにもかかわらず、あえて住宅ローンを組んで購入をする人もいました。ここ数年、そのような問題が生じていたことから、住宅ローン減税の改正が議論されていましたが、今回の税制改正大綱で、いよいよ見直されることになりました。

■住宅ローン減税はどう変わる?

では、2022年度の税制改正大綱で決定された住宅ローン減税案は、どのような内容なのでしょうか。

※残債上限…認定住宅の場合は5000万円、ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)の場合は4000万円
来年度から変更される住宅ローン減税は、これまで年末のローン残高の1%だった控除率が0.7%に縮小。所得要件は、控除を受ける年の合計所得金額が3000万円から2000万円に減額。ローン残高の上限は4000万円から一般的な住宅で3000万円に変更されました。一方で、控除期間は原則10年から13年に延長。1年の最大控除額は40万円から21万円に、最大控除額は400万円から273万円に減少しています。

では実例を用いてどれほど控除額が減少してしまうのかを検証します。

■控除額はいくら変わるのか

旧制度と新制度を一般住宅の場合で比べます。仮に年収900万円の人が借入金利0.5%、返済期間35年、4000万円を借り入れた場合で計算します。

・旧制度
2021年度までの住宅ローン控除で計算します。残債と控除額を見てみましょう。

1年目の1月から住宅ローンを借りた場合、12月末の残債は3903万円です。現行の住宅ローン減税は、この3903万円に対する1%で、39万円が控除されます。さらに翌年以降も年末残高1%で受け取れますので、10年間で受け取ることができる控除額は合計で336万円です。

・新制度

新制度は、控除期間が13年間と延長になる一方で、控除率は年末残高の0.7%と減少しています。また、新制度で受けることができる住宅ローン減税は、ローン残高の上限が3000万円、控除額の最大は21万円と縮小されています。

1年目の年末残高は、3903万円で控除率は0.7%ですので27万円、と言いたいところですが、控除額の上限である21万円となってしまいます。控除期間の13年間で受け取れる合計控除額は265万円です。

旧制度と比較すると、受け取れる最大控除額は71万円も減ってしまいました。

中間層への影響は少ない?
一方、今回のローン減税の改正は、収入における中間層にとってダメージが少なくなるように改正されているようです。

実際に確認してみましょう。

仮に35歳男性、年収550万円、扶養に入っている妻と子ども2人の4人家族の場合はどうなるのか、先ほど同じ条件で計算します。この場合における旧制度と新制度を比べてみます。

・旧制度

4000万円を借り入れした場合、3903万円の1%である39万円の控除が得られるのですが、残念ながら年収の関係でこの金額まで控除されません。

そもそも住宅ローン減税とは、その年に納めた所得税と住民税の一部から税還付を受けられる制度です。4000万円以上の住宅ローンを組んでいたとしても、所得税・住民税の合計額が39万円以下の場合は、住宅ローン減税の控除額を39万円まで受け取れません。

年収550万円の方の場合、所得税と住民税を足し合わせると約27万円のため、受けることができる住宅ローン減税の控除額は約27万円までです。

ここから計算をすると残債の減り方に関係なく、毎年27万円、10年間合計で270万円となりました。

・新制度

一方、新制度の場合受け取れるローン残高の上限額は3000万円で、最大の控除額は21万円です。

計算すると、当初9年間は21万円の控除を受けることになり、その後は減っていってしまいますが、それでも13年間の合計は265万円。旧制度と比較すると、減少した差額は5万円です。

これまでの住宅ローン減税は、年収が高い人が多く受けることができ、中間層の人は最大控除金額を受けきれない場合が多かったため、「金持ち優遇だ」と批判されることもありました。そのため、受け取れる控除額の差を是正する意味合いもあったのかもしれません。

今回の住宅ローン減税の改正、借入金額にもよりますが、年収中間層の方には大きなダメージはなさそうだと言えます。

■中古物件の控除額も減少

次に中古物件の場合を見てみます。旧制度の場合、控除率は新築同様1%で、住宅ローン残債の上限金額は2000万円でした。控除額の最大は年間20万円で、控除期間は10年間、受け取れる合計控除額は最大で200万円でした。

一方、新制度の場合、住宅ローン残債の上限金額は2000万円、控除期間は10年と変化はありませんでしたが、控除率は0.7%へと減少します。

旧制度と比較すると、10年間で受け取れる控除額は最大60万円の差があります。

住宅ローン減税は一般の居住用住宅の場合、自分自身で住む物件に対して受けることができる減税制度です。当然ですが、投資用マンションローン、アパートローンなど、投資を目的としたローンには住宅ローン減税は適用されません。そのため、不動産投資家の皆様に直接影響はなさそうです。

しかし、ご自身が自宅用として購入する場合は確認しておく必要があると思いますし、不動産市場全体で見たときに、投資用不動産市場にも影響が出ることも考えられます。

不動産投資家の皆様も、ぜひ住宅ローンの減税案に注目していただければと思います。

また、改正案はまだ決定しているわけではありません。住宅ローン減税が縮小されるのか、継続されるのか、引き続き注意深く見ておくことをお勧めいたします。

取材協力:関根克直 氏

ファイナンシャルプランナーとして18年間、ライフプラン、住宅ローン、不動産仲介、保険、証券と幅広く活動。現在は住宅系のコンサルタントをしている。自身も不動産投資家を行っており、区分マンション5室を収益物件として所有。1Rマンション投資の「収支損益計算」も得意としている。

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