新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、テレビやネットニュースなどで頻繁に見聞きするワードが「免疫力」。その免疫力を高める栄養素として、「ビタミンD」の注目度が、俄然、高まっています。そんなわたしたちの救世主となる可能性を秘めたビタミンDを効率的に摂取するにはどんな食事を心がければいいのでしょうか。そこで、栄養士の笠井奈津子さんにお話を聞いたところ、「ビタミンDだけでは不十分」だといいます。その真意を伺いました。
■免疫力は、特定の栄養素だけで上がるものではない
みなさんもご存じのとおり、「免疫機能」とは、わたしたちの体に侵入してきたウイルスや細菌などの外敵から自分自身を守る機能のこと。そして、その免疫機能の能力――「免疫力」を高めるとして、いま「ビタミンD」が注目を集めています。みなさんも、テレビやネットニュースなどで見聞きしたことがあるのではないでしょうか。
ビタミンDは免疫機能を調整し、感染症の予防にも関与することが報告されるようになってきましたが、新型コロナウイルスの予防に有効であるかどうかは、まだはっきりとわかっていません。ただ、血中のビタミンD濃度が高い人と低い人で比較すると、後者のほうがインフルエンザにかかりやすかったという研究結果などから、ビタミンDは感染症予防に有効だと期待されています。
「なんだ、だったらビタミンDを意識的にとっても意味はないのか」と思った人もいるかもしれませんね。でも、そもそも免疫力はある特定の栄養素だけで上がるようなものではないのです。
免疫力は、摂取する栄養素はもちろんのこと、ストレスや睡眠、腸内環境などからも影響を大きく受けます。ですから、ストレスを減らしたり良質な睡眠をとったり腸内環境を整えるなどして、「トータルで免疫力を高める」ことを考えることがなにより大切なのです。
■免疫力向上のためには「バランスがいい食事」が最重要
ただ、そうはいっても体そのものをつくるのは口に入れるものですから、トータルで免疫力を高めるための下支えとして食事はとても重要なものです。では、免疫力を高めるためにはどんな食事をすればいいのか? それはトータルで免疫力を高めるということに通じる考え方ですが、やはり「バランスよく食べる」ことに尽きるでしょう。
たとえば、ブドウ糖をエネルギーに変換するにはビタミンB群が必要だというふうに栄養素は互いに助け合っているものですし、栄養素によっては過剰摂取すると臓器に負担をかけてしまうといった過剰症を引き起こすものもあるからです。それこそビタミンDだってとり過ぎれば過剰症を引き起こす栄養素のひとつです。ビタミンDをとり過ぎると、倦怠感や腎障害を引き起すといった過剰症を招くこともあります。
そういうと、それこそ「むしろビタミンDをとらないほうがいいのでは?」と思った人もいますよね。でも、もちろんビタミンDもわたしたちの体にとって大切な働きを持っています。免疫機能の調整役として期待できるだけでなく、カルシウムやリンの吸収を促進して骨や歯を丈夫にするために欠かせない栄養素がビタミンDなのです。
それに、ビタミンDはサプリなどでよほど大量に摂取しない限り、過剰症を引き起こすような量には達しませんから、安心してください。それどころか、ビタミンDが含まれる食材は限られているため、普段の食事ではそれこそ過剰症を引き起こすまでに摂取量が達することはまずありませんし、必要な量をとることが難しい栄養素です。むしろ、免疫機能の調整役としての働きをしっかり果たしてもらうためにも、意識的にそれらの食材を食べてほしいと思います。
■ビタミンAもビタミンCもタンパク質も大切
そのビタミンDを多く含む食材の代表格は、サケ、サンマ、サバといった魚です。でも、「日本人の肉食化が進んで魚介類摂取量が減っている」といったニュースもよく見聞きしますよね。とくにコロナ禍の影響で外食する機会が減っているいまは、自宅で食事をすることが増えていると思いますが、それこそ自炊で使うメーンの食材はどうしても肉になりがちではないでしょうか? だからこそ、肉を控えてサケやサンマ、サバを意識的に食べることを心がけてほしいですね。
他にビタミンDを多く含む食材となると、卵の黄身やキノコ類になります。こういった、先に挙げた魚以外の食材を使って料理をする場合には、ビタミンDを無駄なく効率的に摂取するために「油を使う」ことを意識してみてください。なぜかというと、ビタミンDは油脂に溶けやすい脂溶性という特徴を持っているからです。先に挙げた魚はもともと脂が多い食材なので問題ありませんが、キノコ類だったら、油で炒めるとかノンオイルではないドレッシングをかけて食べるという具合です。
それから、先にもお伝えしたように、「バランスよく食べる」ことがやはり大切。免疫力に好影響を与えてくれる栄養素は、ビタミンDだけではないからです。たとえば、ビタミンA、ビタミンC、タンパク質もそういった栄養素です。
ビタミンAは、粘膜を正常に保ってくれる働きによってわたしたちをウイルスなどの外敵から守ってくれます。ビタミンCは、免疫機能に悪影響を及ぼすストレスに対する抵抗力――抗ストレス作用を持っているために、結果的に免疫力を高めてくれる。タンパク質は、それこそ免疫機能を根本から支える免疫細胞をつくるための材料です。
そういった意味では、食事量を減らすことがいちばんよくないことといえるかもしれません。いま、在宅時間が増えたことで「体を動かしていないから、太らないために食事量を減らしている」という人が増えているようです。そんな食生活では、ビタミンDはもちろん、ビタミンAもビタミンCもタンパク質も不足してしまいます。大切な自分の体を守るために、食事量を減らすことなどなく、必要な栄養素をしっかりと摂取することを意識してほしいですね。
【笠井さんおすすめ! 簡単「ビタミンD」摂取レシピ】
「サバ缶とキノコの和風ペペロンチーノ」
■材料(ふたり分)
サバの水煮缶 1缶(200g)
シメジ 1袋
スパゲティ 160g
ニンニク 1かけ
柚子胡椒 少々
オリーブオイル 大さじ2
万能ネギ(お好みで) 2本分(小口切りしたもの)
■つくり方
①フライパンにオリーブオイルを入れ、みじん切りにしたニンニク、石づきを取ってほぐしたシメジを加えて炒める
②香りが出たら、サバの水煮缶を汁ごと加えて加熱し、柚子胡椒、ゆでたスパゲティを加えてまぜる。お好みで万能ネギを加えてできあがり
構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム) 取材・文/清家茂樹 写真/櫻井健司
笠井奈津子
かさいなつこ1979年、東京都に生まれる。栄養士、フードアナリスト、生活リズムアドバイザー、健康リズムカウンセラー、幼児食インストラクター。聖心女子大学文学部哲学科卒業後、香川栄養専門学校(現・香川調理製菓専門学校)を経て栄養士になったのち、都内心療内科クリニック併設の研究所で食事カウンセリングに携わる。起業家養成学校のビジネスプランコンテストで優勝したことを機に、フリーランスに転身。以降、食の大切さを伝えるためのさまざまな活動をはじめる。企業研修では、数百人単位の参加者でも事前に食事記録をチェックし、労働環境にも配慮。コンビニエンスストアにおける食べ物の選択法など、机上の空論だけにならないアドバイスを大事にしている。多いときには月20本の研修をしていたが、産後、働き方を見直すなかでパラレルキャリアの道を開拓。自身の経験を生かして、株式会社圓窓代表取締役・澤円氏の執筆・講演業のマネージメントに携わる。現在は、栄養士と文化人のプロデュース業を兼ねる。1児の母。著書に、『気が散る男はすぐ太る』(大和書房)、『メグルカラダ 「4つのお皿」で美人化計画』(講談社)、『甘い物は脳に悪い すぐに成果が出る食の新常識』(幻冬舎)、『ときめきスイッチで自分が変わる 食事カウンセラーが教えるメンテごはん』(主婦と生活社)、『成功する人は生姜焼き定食が好きだ』(晋遊舎)などがある。
『10年後も見た目が変わらない食べ方のルール』(PHP研究所)
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September 30, 2020 at 10:00AM
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