Sunday, July 10, 2022

妊婦さんは食べ過ぎ禁物?うなぎの栄養素とビタミンA過剰摂取リスク - All About

土用の丑の日はなぜ「うなぎ」? 夏のスタミナ源としても好適なうなぎ

うなぎのかば焼き

土用の丑の日の縁起物でもあるうなぎ。栄養豊富で夏のスタミナ食としても好適です

みなさんは、夏の食べものと言えば、何を思いつきますか? スイカ、かき氷、そうめん、冷やし中華など、暑さに対抗して、冷たいものや水分をたっぷり含んだ食材が好まれますね。その一方で、夏バテ解消をねらったスタミナ源として「うなぎ」は外せないという方も多いでしょう。私自身も毎年、土用の丑の日にうなぎを食べるのを楽しみにしています。

うなぎは栄養満点で、夏のスタミナ食として好適とも評されます。疲労回復に効果があるビタミンB1、抗酸化作用が強いビタミンE、神経系の発達や動脈硬化の予防にも効果があると言われる不飽和脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)の他、ミネラルとして亜鉛やカルシウムなども豊富に含んでいます。

また、体の中で作ることができず食事から摂らなくてはならない「必須栄養素」の一つ、「ビタミンA」を豊富に含む食材としても有名です。うなぎの蒲焼きをおよそ3分の1パックくらい食べれば、1日に必要なビタミンAを満たすことができると言われています。
 

ビタミンAの役割は? 目や皮膚の健康を保つのに必要な栄養素

ビタミンとは、体の機能を保つのに必要な栄養素で、ビタミンA、B、C、D、Eなどがあるというのはご存知ですよね。このうち、ビタミンAは、脂溶性ビタミンに属し、皮膚細胞を作るのに必須であることなどが知られています。

また、ビタミンAは、いくつかの化合物の総称で、「レチノール」(アルコールの一種)という化合物がその代表です。一般にビタミンAというときは、このレチノールを指すことが多いです。他のビタミンAとしては、レチナールやレチノイン酸というものもあります。

私たちの目の網膜には、光を感じ取る細胞があり、その中でビタミンAの一種である「レチナール」という成分が重要な役割を果たしています。具体的には、網膜にある「桿体(かんたい)」と呼ばれる細胞中にあるレチナールが、光が当たった時に構造変化を起こすことで、私たちは光を感じ取ることができているのです。

みなさんは「夜盲症(やもうしょう)」をご存知でしょうか。明るいところから暗いところに入った時や、夕暮れ時、まわりがだんだん暗くなってきた時に、ものがよく見えないことを自覚する病状です。夜間に視力が低下する種類が多い鳥類になぞらえて、俗に鳥目(とりめ)とも呼ばれます。

夜盲症のうち、先天性のものは、生まれつき網膜に異常があるわけですから、治療が難しいですが、後天性のものは、栄養不足が主な原因となります。ちゃんと食べ物からビタミンAを摂取できていないと、目のレチナールが不足し、うまく光を感じ取ることができなくなり、夜盲症になってしまうのです。
 

妊婦さんはうなぎの食べ過ぎに注意! 妊娠中のビタミンA過剰摂取のリスク

ビタミンA(レチナール)が不足しないようにするには、ビタミンAを含む食事を積極的に取るのが手っ取り早いわけですが、注意点があります。

ビタミンAは、脂溶性で、体内に蓄積しやすい性質があるので、食べ過ぎると「過剰症」を引き起こすことがあります。いくらおいしくて大好きだからと言って、毎日食べるのはやめたほうがいいでしょう。

また、特に妊婦さんは、要注意です。ビタミンAを摂りすぎると、お腹の中の赤ちゃんに奇形が生じるリスクが高くなることが知られているからです。ビタミンAを比較的豊富に含む食べ物として有名なのは、うなぎ以外にも、レバー、牛乳、チーズ、バターなどの動物性食品があります。実際のところ、これらの食べものを普通に食べても問題になることはめったにありませんが、「栄養をつけるために」などと思って積極的に食べ過ぎないように気を付けましょう。加えて、もっと注意してほしいのは、いわゆる健康食品やサプリメントです。妊娠中は成分表示を見て、ビタミンAを含むものは避けましょう。とにかくビタミンAは「適度に」とるのが良いと理解しておくとよいでしょう。
 

うなぎ以外でビタミンAを安心して摂るなら緑黄色野菜がお勧め!

実はビタミンA不足を避けるために、ビタミンAそのものを食べる必要はありません。植物性食品に含まれる「カロテノイド」と言われる成分をとることで補えます。ビタミンAの原料となるカロテノイドを比較的多く含むと知られている食べ物は、ニンジン、カボチャ、ホウレンソウなどの、いわゆる緑黄色野菜です。

野菜に含まれるカロテノイドにもいくつか種類があるのですが、その代表は「β-カロテン」です。

「ニンジンにはβ-カロテンが含まれる」という説明をよく耳にすると思いますが、実はこれは当たり前なのです。というのは、そもそもカロテノイドとかカロテンという呼び名は、ニンジンが起源だからです。ニンジンのことを英語でキャロットと言いますよね。そして、ニンジンの栄養分として見つかった物質に対して、「キャロットに含まれるもの」という意味で、最初に「キャロテン」と名付けられたのです。そして、その後、似たような化合物がたくさん見つかったので、「~のような」という意味の「オイド」を末尾につけて、カロテン+オイド=カロテノイドとまとめて呼ばれるようになったというわけです。なので、「ニンジンにはカロテンまたはカロテノイドが含まれる」というのは、「ニンジンにニンジンの成分が含まれる」と言っているのと同じなので、当たり前の話なのです。まあそんな細かいことどうでもいいわという声が聞こえてきそうなので、話を先に進めますね。

β-カロテンとビタミンAの化学構造を見比べるとよく分かるのですが、実はカロテンは、2つのビタミンA分子が左右対称にくっついた形をしています。そして、β-カロテンを食べた場合、体の中で、真ん中の化学結合がちょきんと切断されて、2つのビタミンA分子になります。なので、カロテノイドはビタミンAの原料になりうるのです。しかも、カロテノイドがちょきんと切断されるのは、酵素の働きによるもので、私たちの体に予め備わっている酵素の量には限りがあります。ですから、もしカロテノイドをたくさん取り過ぎても、酵素が処理しきれるだけしか分解されませんから、ビタミンA過剰症を生じることはありません。

ビタミンAを補うときには、ビタミンAそのものを摂取するのではなく、カロテノイドを含む緑黄色野菜を食べるのがお勧めと言われるのはこういうわけです。

もしこの記事を読んでくださっている方の中に、妊娠中の方がいらっしゃったら、しばらくはうなぎは我慢して、代わりに緑黄色野菜でビタミンを補いましょう。元気に赤ちゃんが生まれた来年の土用の丑にうなぎを食べるのを楽しみにしてはいかがでしょうか。

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