およそ10年ほど前、ユーザーが複数のストリーミング配信サービスに登録していても、ケーブルテレビの契約料(あるいはその1.5倍の金額)ほどお金がかからなかった...そんな時代がありました。
なんとも素晴らしい低価格娯楽の時代でしたが、長くは続きませんでした。
主要なストリーミング配信サービスの値上げ
さて、ストリーミング配信サービスの値上げに関して、グローバルの視点から見てみましょう。
昨年、Disney+、HuluやApple TV+などが月額数ドルの値上げを実施。2023年になり、つい最近、Google(グーグル)が広告収入減少にともないYouTube Premiumが値上げとなりました。
さらに、Neflixが一番安いベーシックプランを廃止すると発表。これにともなう別プランの値下げなどはなく、次に安い広告なしオプションは、スタンダードプランということになります。
こうしたストリーミング配信サービスの値上げがここ数年特に目立っています。
日本での値上げ事例
ちなみにこれら主要のストリーミング配信サービスの値上げに関して、ここ最近の日本での事情はどうでしょうか。
Disney+は、2021年11月に新たなコンテンツの追加などがあり月額770円から990円に値上げを実施。同年2月には、Netflixのスタンダードプランが月額1,320円から1,490円への値上げされました。
YouTube Premiumは、2022年にファミリープランが月額1,780円から月額2,280円へと値上がりしました。Apple TV+も昨年末に300円の値上げが行なわれました。
最初に述べたグローバルでの値上げが今後(あるいはこれからすぐに)、日本でも施策として行なわれる可能性は十分あります。
価格上昇の波
値上げの事例を挙げてきましたが、価格上昇には波というものがあります。
Netflixは2007年にストリーミング配信サービスを開始して以来、価格の90%以上の値上げをしています。さらに、劇的な値上げのひとつはここ数年の間に起きています。
だいたい2~3年ごとに価格が上がるということから、この定期的な値上げに関しておおよその予測もたてられます。
サービスの料金自体が、国によって大きく異なりますが、いくつかの国では2023年初めに値下げが行なわれました。
とはいえ、アメリカでのNeflixの価格はここ数年上昇傾向にあります。この価格上昇が将来的に鈍化する兆しもありません。
コンテンツ制作という面ではどうか
Forbesの調査によれば、85%以上の世帯が少なくとも1つのストリーミング配信サービスに加入しているといいます。
また、そのほとんど世代がさまざまなサービスに対し、少なくとも月に39ドル(約5,500円)もの金額を支払っているとのこと。
また、調査では「多くのストリーミング配信サービス契約ユーザーが、たった1つのコンテンツを見るためにそれぞれのサービスに契約している」とも言及されています。
では、「コンテンツの制作」という面で見てみましょう。Netflixは、2023年末までのコンテンツ支出の予算を上限170億ドル(約1兆3990億円)と設定しています。しかし、この予算上限はさらに上回る可能性があるようです。
たとえば制作スケジュールを考えると、現在進行中のストライキの影響が考えられます。脚本家や俳優によるストライキによりハリウッドのいたるところが停止しているため、コンテンツ制作スケジュールの面で当然混乱するでしょう。
ユーザー数は有限だけど成長しなければならない
ストリーミング配信サービスが成長を続けるための方法は、基本的にサービス加入者の増加です。また、契約し続けているユーザーには、より多くの料金を支払ってもらう、ということもいえます。
Netflixはそのために、パスワード共有の対策や広告プランなどの施策に注力しているのでしょう。Netflixは、現在料金を支払っていないすべてのユーザーを取り込み、ダウンロードして支払うといった方法を見出すはずです。
しかし、当然ながら契約ユーザー数というものは有限です。ストリーミング配信サービスが、投資家たちが望む継続的な成長を実現するためには、利用しうる手段のひとつとして価格の引き上げをせざるを得ないのでしょう。
10年後のストリーミング配信サービス価格予想
さて、米Gizmodoでは、いくつかの主要なストリーミング配信サービスを調査し、過去のパターンに基づき、10年後にかかるであろう費用を見積もりました。
先に断っておくと、科学的な算出ではありません。さらに、将来のインフレを予想した調整なども含んでいません。
これらのサービスの価格が上昇する1年ごとの平均金額を合計して、10年後を見積もる単純な計算を行なっているにすぎません。
これは、年々増加していく料金に対し、ユーザーの消費が増えていくかのデモンストレーションともいえます。おそらく、今後数年のうちにストリーム配信サービスは、最終的に顧客数の限界に達したことに気づくでしょう。
Netflix
2013年のスタンダードプラン金額:月額7.99ドル(約1,125円)
2023年のスタンダードプラン金額:月額15.49ドル(約2,181円)
2033年の予想金額:月額29.99ドル(約4,223円)
※2023年7月30日時点のレートで換算
Netflixのサービス価格は、ほかのサービスと比べて劇的に変化をしています。その理由のひとつにあげられるのは、"ストリーミング配信を最初に普及させたサービス"というレガシーからきているでしょう。
2013年以降、Netflixでは5回の値上げが行なわれました。Netflixは、2019年に月額10.99ドルから12.99ドルに値上がり。さらに2022年1月には、料金がさらに1.5ドル値上がりしました。
この基準に基づけば、ユーザーは1年以内にさらに1~2ドルの値上がりを強いられると予想できます。
Hulu
2013年の(ほぼ)広告なしのプレミアムプラン金額:月額7.99ドル(約1,125円)
2023年の広告なしプランの金額:月額14.99ドル(約2,111円)
2033年の予想金額:月額27.99ドル(約3,943円)
※2023年7月30日時点のレートで換算
2019年に、ディズニーがHulu株の過半数を買い取り、Huluを子会社化しました。ディズニーはまもなく、Disney+とHulu、ESPN+を1つのパッケージに統合するプランを作るとのこと。
統合されたとして、どのような価格設定となるのかはまだわかりません。現在3つのサービスのバンドル契約が月額19.99(約2,815円)ドルということを考えると、この価格は妥当なものだといえるかもしれませんね。
Disney+
2019年11月サービス開始時の広告なしプラン金額:月額6.99ドル(約984円)
2023年の広告なしプラン金額:月額10.99ドル(約1,548円)
2033年の予想金額:24.49ドル(約3,449円)
※2023年7月30日時点のレートで換算
前述のように、ディズニーはHuluなどを含む複数のストリーミング配信サービスを1つに統合すると計画しています。それによりコストが削減される可能性が考えられます。
Disney+は、2021年3月から2022年12月にかけて劇的な値上げが行なわれました。特にわずか4年前に格安でサービスが開始されたことを考えると上昇率は顕著といえます。
短期間でのこの上昇率は、特にディズニーがインドで人気だったクリケット競技配信から撤退した後に多くのユーザーが解約したときのようなことが起きれば、さらなる劇的な変化が起きるかもしれません。
Amazon Prime Video
2016年4月サービス開始時の金額:月額8.99ドル(約1,266円) プライム会員年会費は99ドル(約1万3945円)
2023年の金額:月額8.99ドル(約1,266円) プライム会員年会費は139ドル(約1万9580円)
2033年の予想金額:月額8.99ドル(約1,266円)のままかも? プライム会員年会費は179ドル(約2万5215円)
※2023年7月30日時点のレートで換算
Prime Videoの場合は、プライム会員がそのままPrime Videoを利用できます。Amazonという巨大ECサイトを利用させるためインセンティブとして機能する一面もあるといえます。
プライム会員年会費の値上げは、会員数が数カ月減少しているという報道の直前に行なわれました。
Amazonの場合は、Prime Video自体がAmazonというサービスの中でインセンティブとして機能しているといえます。
このように、Prime Videoというサービス自体の立ち位置や、Prime Video単体のサービス価格が値上がっていないことを考慮しても、値上げが絶対にないとは言い切れないでしょう。
年会費などが値上げしていることも考えると、Prime Videoのサービス価格の値上げも行なわれる可能性は高いといえます。
Apple TV+
2019年11月サービス開始時の金額:月額4.99ドル(約702円)
2023年の金額:月額6.99ドル(約984円)
2033年の予想金額:月額12.99ドル(約1,829円)
※2023年7月30日時点のレートで換算
上記の通り、Apple TV+は2019年に月に5ドルという安さでサービス開始しました。Apple(アップル)という力をもってしても、開始から3年経った2022年10月に月額6.99ドルに引き上げられました。
Netflixのような企業は、ストリーミング配信のカタログ自体にほぼ完全に依存しています。
一方で、AppleとAmazonは、テック製品とソフトウェアの巨大なバックエンドにより各自のサービスのサポートができます。
とはいえ、サービスの価格値上げを完全に回避することはできないでしょう。
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July 31, 2023 at 06:00PM
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