逃げ場のない京王線の特急電車内で多くの乗客を無差別に襲った凶行に、東京地裁立川支部は31日、懲役23年を言い渡した。殺人未遂や現住建造物等放火などの罪に問われた服部恭太被告(26)に対する判決は、パニック状態に陥った電車内の様子や乗客の恐怖を生々しく浮かび上がらせた。「非常に悪質な犯行で、刑事責任は極めて重い」。竹下雄裁判長は被告を厳しく非難した。
午後3時から始まった判決の言い渡し。服部被告は多くの傍聴人で埋まった法廷に、初公判と同様、上下黒スーツに青のネクタイ姿で現れた。竹下裁判長が主文を告げると、小さくうなずき「はい」と答えた。
公判の争点は、放火による殺人未遂罪が成立するかということだった。検察側は、被告の近くにいた乗客12人について同罪が成立すると主張。一方、弁護側は「死亡する危険性のある場所から退避していた」とし、12人への殺人未遂罪は成立しないと反論していた。
判決によると、服部被告は2021年10月31日夜、走行中の京王線車内で、70歳代男性の胸をナイフで刺した後、車両の連結部分などにいた多数の乗客に火をつけて焼き殺そうとした。乗客めがけてライター用オイルをまき、殺虫剤スプレーを乗客らの頭上に向けて噴射し、火のついたライターを床に投げると、スプレー缶が爆発して炎が激しく燃え上がった。
判決は、こうした状況をとらえた動画や乗客の証言から、「混乱状態に陥った乗客らが連結部分に押し寄せて次々と転倒したり、荷物が引っかかったりして、隣の車両に簡単に抜け出せない状況だった」と指摘。12人のうち連結部分などにいた10人を「死亡する危険性がある場所にいた」として、同罪の成立を認定した。一方で、残る2人は連結部分などの付近にいたとは認められないとした。
さらに、被害者らの苦痛にも言及し、「被害者らには全く落ち度はなく、電車内で突如襲われて感じた『焼き殺されるのではないか』という恐怖や不安は計り知れない」と述べた。
竹下裁判長は判決の言い渡し後、「長い服役期間、事件や被害者のことを考え生活してください。苦しくても生きて。償いを忘れないで」と説諭した。服部被告は小さな声で「はい」と言い、法廷を後にした。
判決後に記者会見した補充裁判員の40歳代の男性は「服部被告は公判で反省の言葉を述べていたが、その場しのぎで言っているという印象を受けた」と語った。
判決後、放火による殺人未遂罪の対象となった乗客10人のうちの1人で、被害者参加制度を利用して公判で意見を述べた女性は弁護士を通じ、「被害者の心情も考慮してくれたのかなと感じた。(判決まで)長かったが、ようやく終わって区切りをつけられそうです」とコメントした。
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