新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急事態宣言の1カ月延長が決まった。菅義偉首相は発令時に「1カ月後には必ず事態を改善させる」と明言し、新規感染者数は減少傾向にあるが、解除には至らなかった。この間、政権内では宣言解除の基準を巡って見解の相違や修正が表面化し、与党議員が深夜の街に繰り出していたことも発覚。協力する国民の側に政治不信が広がっており、感染対策の旗を振る首相らの呼び掛けがかき消されかねない。(上野実輝彦、井上峻輔)
◆1周と思ったら「もう1周走って」
首相は2日午後、衆参両院の議院運営委員会で、それぞれ緊急事態宣言の延長方針を報告。1カ月で解除できなかったことを「大変申し訳ない」と陳謝しつつ「もうひと踏ん張りして、国民の協力をいただきたい」と訴えた。
宣言発令を決めた1月7日時点で、7500人余りだった全国の一日の新規感染者数は、今月1日には約1800人まで減少。首相は2日夜の記者会見で「これまでの対策で、はっきりと効果が見られ始めている」と強調したが、政府高官は「1周だと思って頑張って走って来た国民に『もう1周回って』と言うことになった」と語る。
◆解除の目安にぶれ
各種世論調査でも明らかなように、政権のコロナ対策が国民の支持を得ているとは言えない。経済活動を重視し、対応が後手に回った印象が強いのに加え、宣言解除を巡る目安や基準もぶれが目立っているためだ。
政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長が、宣言発令が濃厚になった年明けに「今の感染状況を考えると、1カ月未満は至難の業だ」との見解を示したのが1月5日。だが、首相は発令を表明した7日の記者会見で「1カ月後には改善」に言及した。
宣言解除の基準についても、西村康稔経済再生担当相は当初、東京は「新規感染者数が1日当たり500人」を下回るのが目安と説明したが、後に「500人を下回っても直ちに解除するということではない。病床の状況などを総合的に判断する」と軌道修正。東京の直近の新規感染者数が今月1日は393人、2日は556人と推移する中で、政権は延長方針を決定した。首相は2日の会見で医療体制の逼迫を挙げ「入院者、重症者を減少させる必要がある」と説明した。
◆「これでは国民がついてこない」
厳しい国民生活が続く中、発覚したのが与党議員の軽率な行動だ。
松本純・元国家公安委員長ら自民党議員3人は連れ立って、公明党幹事長代理だった遠山清彦氏は知人とともに、宣言中の深夜に東京・銀座のクラブで飲食していた。松本氏は発覚時に「1人で行った」と、うその説明をしていたことも認め、自民党の3氏は離党、遠山氏は議員辞職に追い込まれた。
首相は議運委で「誠に残念で、国民に心からおわび申し上げる」と謝罪。野党から、ステーキ店で大人数の会食に参加した昨年12月の自身の行動も追及され「大いに反省している。その際は緊急事態宣言はなく(飲食店の営業は)午後10時まで許されていた」と釈明に追われた。自民党内からも「一致団結をお願いしている与党が信頼を失墜させている。これでは国民はついてこない」(中堅)と批判の声が出ている。
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