悪質かつ大規模な、民主主義への挑戦に等しい行為だ。徹底した解明が必要である。
愛知県の大村秀章知事の解職請求(リコール)を巡る不正署名問題で、愛知県警が強制捜査に着手した。家宅捜索を行い、各選管にあった署名簿を押収した。
署名集めは、美容外科院長の高須克弥氏を運動団体の会長として昨秋に行われた。約43万人分のうち約8割が無効と判明した。そのうち約9割は、同じ人が何回も書いたとみられる。
異様な事実が、次々と明らかになっている。なかには約8000人分もの亡くなった人の「署名」が含まれていた。
しかも、関係者によると、名古屋市の広告関連会社が下請け会社を通じてアルバイトを募集し、佐賀県にある会議室に集め、署名簿に他人の名前を書かせていたという。金銭を介して名簿を偽造したとすれば、言語道断だ。
業者が仲介したのであれば相当の経費が必要であり、何者かが仕組んだ組織的な偽造とみることが自然だ。だれが指揮をし、資金を提供したのか。
署名は、大村氏と敵対する河村たかし名古屋市長が全面支援した。河村氏は過去に自らが主導した市議会解散請求で署名集めを担った「受任者」の名簿を、今回の運動団体に貸与していた。
偽造にあたっては、何らかの名簿が原本に使われた可能性がある。どのような経緯で何の書類が悪用されたかも解明すべきだ。
リコール運動に限らず、署名活動は民意や意見を示す手段として、幅広く用いられる。今回の不正はこうした活動全般への信頼に傷をつけかねない。
にもかかわらず、高須氏や河村氏の言動は、混乱を招いた責任を感じているようにみえない。
高須氏や団体事務局幹部は不正への関与を否定している。だが、
疑惑が指摘されてからも、徹底した実態調査をしてこなかった。名簿の管理方法などを、もっと具体的に説明すべきだ。
河村氏も「僕も被害者」と語るなど、まるで人ごとのような言いぶりだ。過去の名簿類まで貸して協力した以上、まぎれもない当事者だ。署名が混乱を生んだ政治的責任を自覚しなければならない。
からの記事と詳細 ( 社説:愛知リコール強制捜査 組織的関与の疑惑解明を - 毎日新聞 )
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