訪問介護は、自宅などでヘルパーによる介護を受けられるサービスです。訪問介護は介護保険サービスのひとつですが、利用するにはいくらかかるのでしょうか。
この記事では、訪問介護の料金表や、具体的な料金例、費用を軽減できる制度などについて解説します。
訪問介護は自宅で受けられるサービスだっポ。
訪問介護とは、ヘルパーが利用者の自宅などを訪問するサービスのことです。
主なサービス内容は、入浴・排泄などの身体介護、食事準備・掃除などの日常生活の援助、通院時の移動などに関する介助の3つです。
訪問介護は普段と同じ生活環境で介護を受けることができるため、無理のない在宅生活を継続できます。
高齢者は新しい環境への適応が難しくストレスを抱えやすいため、住み慣れた自宅でサービスを受けられるのは大きなメリットです。また、家族の介護負担も軽減できます。
訪問介護を利用できるのは要介護1~5の認定を受けた人です。
ヘルパーは一人で利用者の自宅を訪問するため、基本的には最低でも介護職員初任者研修を修了したヘルパーが訪問します。
また、訪問介護サービスを受けるときの注意点として、1日に2回以上利用するときは2時間以上の間隔を空ける必要があります。
訪問介護で利用できるサービス
訪問介護ではどんなサービスが受けられるのかな?
訪問介護で利用できるサービスは、身体介護、生活支援、通院等乗降介助の3つに分けられます。
身体介護
身体介護は利用者の身体に直接触れて行う介護で、主な内容は以下の通りです。
食事介助 | 食事の介助や口腔ケア |
---|---|
入浴介助・清拭 | 入浴時の手助けや洗髪、身体の清拭 |
排泄介助 | トイレ誘導やおむつ交換など |
体位変換 | 褥瘡(床ずれ)予防のために体の向きや位置を変える介助 |
身体整容 | 洗顔、歯磨き、整髪などの介助 |
更衣介助 | 衣類の着脱の介助 |
服薬介助 | 薬の種類や服用時間の把握、服薬時の介助 |
移動・移乗介助 | 歩行の介助や、ベッドから車椅子などへの移動の介助 |
外出介助 | 散歩など外出時の介助 |
生活援助
生活援助は身の回りの家事などを援助するサービスで、利用者ができないことをサポートします。
調理・配膳 | 食事の準備や配膳、片付けなど |
---|---|
洗濯 | 衣服の洗濯やたたんで収納するなど |
掃除 | 室内や浴室、トイレなどの掃除やゴミ出しなど |
買い物代行 | 食材や日用品などの買い物代行 |
薬の受け取り | 薬局などでの薬の受け取り |
通院等乗降介助
通院などが必要な場合は、車の乗り降りや移動、受診手続きなどのサポートを受けられます。
乗降介助 | 車・電車・バスなどの乗り降りのサポート |
---|---|
外出準備 | 整容や更衣など外出する準備の介助 |
受診の手続き | 受付での手続き代行 |
薬の受け取り | 薬局への同行、薬の受け取り |
訪問介護で利用できないサービス
訪問介護には受けられないサービスもあるっポ…。
利用者本人の援助に該当しないサービスや日常生活の援助の範囲を超えるサービス、医療行為は訪問介護で利用できません。
利用者の直接援助にならないサービス
訪問介護は利用者本人に必要な介護を提供し、生活を支援するためのサービスです。以下のような本人以外への援助はサービス対象外となります。
利用者の家族の食事準備 |
利用者の家族分の洗濯 |
利用者が使用していない部屋の掃除 |
利用者の家族のための来客対応 |
利用者の家族の子どもへの対応 |
日常生活の援助の範囲を超えたサービス
ヘルパーが援助をしなくても利用者の生活に支障のないものは、訪問介護のサービスに含まれません。日常生活の援助に当てはまらないサービスの例は以下の通りです。
ペットの世話 |
草むしり |
窓のガラス拭き |
正月の準備 |
家具の移動や修理・留守番など |
医療行為
ヘルパーは医療行為が行えません。インスリン注射や在宅酸素の管理といった医療行為が必要であれば、訪問看護などを利用する必要があります。
ただし、研修を受けたヘルパーであれば一定の条件下でのみ痰の吸引や経管栄養を実施できる場合があります。
病院内の介助
ヘルパーが通院の付き添いをした場合でも、病院内での介助は訪問介護のサービスに含まれません。
基本的には院内スタッフが担当しますが、利用者の心身の状態などによっては例外的に認められるケースもあります。
訪問介護の料金表と主なサービス加算を紹介するっポ。
訪問介護の料金は、利用するサービスの内容や所要時間、その他の加算によって決定します。
要介護度による費用の違いはありませんが、要介護度が上がるほど必要とするサービスやかかる時間が増えやすくなります。そのため、要介護度が高くなると費用も高くなる傾向です。
介護保険サービスの自己負担割合は原則1割ですが、所得によっては2割、3割となります。以下はそれぞれのサービスにかかる1割の場合の料金表です。
時間 | 料金 |
---|---|
20分未満 | 163円 |
20分以上30分未満 | 244円 |
30分以上1時間未満 | 387円 |
1時間以上 | 567円(30分を増すごとに+82円) |
※1単位10円、自己負担1割の場合
時間 | 料金 |
---|---|
20分以上45分未満 | 179円 |
45分以上 | 220円 |
※1単位10円、自己負担1割の場合
時間 | 料金 |
---|---|
片道 | 97円 |
※1単位10円、自己負担1割の場合
その他のサービス加算
基本料金に加え、利用するサービスや事業所の体制により以下の料金が追加されます。
訪問介護の主なサービス加算は以下の通りです。
初回加算
200円/月
新規利用者の居宅にサービス提供責任者が訪問、または他の介護職員等が同行した場合の加算
生活機能向上連携加算
100円/月もしくは200円/月
医師やリハビリテーション職等と連携し、生活機能の向上を目的とした計画書を作成してサービスを提供した場合の加算
口腔連携強化加算
50円/回 ※月1回に限る
ヘルパーなどが口腔の健康状態を確認し、歯科専門職による適切な口腔管理につなげた場合の加算
緊急時訪問介護加算
100円/回
利用者やその家族から連絡を受け、ケアプランにない日時にサービスを提供した場合の加算
認知症専門ケア加算
3円/日もしくは4円/日
認知症介護の専門的な研修を修了した者が事業所に配置され、チームとして専門的な認知症ケアを実施するなどした場合の加算
中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算
+5%
山間の地域など、通常の事業の実施地域を超えてサービスを提供した場合の加算
特定事業所加算
+3~20%
ヘルパーに対する研修や会議が実施され、介護福祉士の割合などを満たしている事業所への加算
介護職員処遇改善加算
+5.5~13.7%
介護職員の安定的な処遇改善を図るための加算
※1単位10円、自己負担1割の場合
出典:厚生労働省「介護報酬の算定構造」
訪問介護の利用例を2つ紹介するっポ。
訪問介護を利用すると、1か月あたりどのくらいの費用がかかるのでしょうか。以下は訪問介護サービスの利用例です。
なお、訪問介護は要介護度による料金の違いはありません。
利用者プロフィール | ・要介護1 ・一人暮らし ・歩行が不安定で外出にサポートが必要な状態 |
---|---|
利用するサービス内容 | 週2回の買い物代行を利用(生活援助:1回につき20分以上45分未満) |
1か月の自己負担額目安 | 179円 ×週2回(月8回) = 1,432円 |
※1単位10円、自己負担1割の場合
利用者プロフィール | ・要介護2 ・家族と同居 ・日中は家族が不在になるため、食事や服薬などにサポートが必要な状態 |
---|---|
利用するサービス内容 | 平日の食事・服薬の介助(身体介護:1回につき30分以上1時間未満) |
1か月の自己負担額目安 | 387円×週5回(月20回)=7,740円 |
※1単位10円、自己負担1割の場合
家族が介護できる状況なのか、一人暮らしなのか、認知症はあるのか、身の回りのことがどれだけできるのかによって、必要な訪問介護の回数や時間、サービス内容の組み合わせは異なります。
詳しいサービス内容や利用時間、利用回数はケアプランによって決まります。必要なサービスなどがあれば、ケアマネジャーと相談のうえで決定しましょう。
介護保険サービスの自己負担額を軽減できる制度があるっポ。
訪問介護の1回あたりの料金は高額ではありません。しかし1か月単位でみると、利用回数や利用時間によってはそれなりの費用となります。年金生活の高齢者などにとっては大きな出費です。
そこで、月々の介護サービス費用が家計を圧迫しないように、介護サービス費が高額になったときに助けてくれる制度があります。
訪問介護の料金を軽減できる制度は以下です。
・高額介護サービス費
・社会福祉法人等による低所得者に対する利用者負担軽減制度
これらの軽減制度は、1か月あたりの自己負担額が高額になりすぎた方や、所得の低い方が対象です。
高額介護サービス費
高額介護サービス費とは、支払った介護サービス費が高額になりすぎたときに利用できる制度です。
1か月に支払った介護保険サービスの自己負担額がある基準を超えると、超過分の払い戻しを受けるための申請ができます。
一般的な所得の方の負担限度額は月額44,400円ですが、所得によって上限額は異なります。
高額介護サービス費の負担上限額は以下の通りです。
区分 | 負担上限額(月額) |
---|---|
課税所得690万円(年収約1,160万円)以上 | 140,100円(世帯) |
課税所得が380万円(年収約770万円)~課税所得690万円(年収約1,160万円)未満 | 93,000円(世帯) |
市町村民税課税~課税所得が380万円(年収約770万円)未満 | 44,400円(世帯) |
世帯全員が市町村民税非課税 | 24,600円(世帯) |
世帯全員が市町村民税非課税で、前年の公的年金等の収入とそのほかの合計所得の合計が80万円以下の方等 | 24,600円(世帯) 15,000円(個人) |
生活保護を受給している方等 | 15,000円(世帯) |
高額介護サービス費は、訪問介護をはじめ、デイサービスやデイケア、ショートステイなど他の介護保険サービスも対象となります。
社会福祉法人等による低所得者に対する利用者負担軽減制度
この利用者負担軽減制度は、低所得で生計が困難な方の負担額を軽減するものです。利用者の負担を軽減し、介護保険サービスの利用を促進することを目的としています。
この制度が適応となるのは、申出をしている社会福祉法人のみです。また、以下の要件すべてに当てはまり、市町村民税非課税世帯の方のうち市町村が認めた方、または生活保護受給者が対象となります。
- 年間収入が単身世帯で150万円以下(世帯員が1名増えるごとに50万円を加算した額以下であること)
- 預貯金等が単身世帯で350万円以下(世帯員が1名増えるごとに100万円を加算した金額以下であること)
- 日常生活に使用する資産以外に活用できる資産がない
- 負担能力のある親族等に扶養されていない
- 介護保険料を滞納していない
対象者に該当すると、介護サービス費、食費、居住費(滞在費、宿泊費)の負担額が原則として4分の1軽減されます。
ただし、この利用者負担軽減制度を利用するためには、お住いの市町村への申請が必要です。必要書類を提出し、審査後に交付された「社会福祉法人等利用者負担軽減確認証」を事業者に提示することで、利用者負担が軽減されます。
訪問介護サービスの利用対象者は要介護1~5の認定を受けた方だっポ。
訪問介護サービスを利用するためには、まず要介護認定を受ける必要があります。
以下の流れに沿ってサービスの利用を開始しましょう。
1.要介護認定を受ける
2.ケアマネジャーに相談する
3.ケアプランを作成する
4.訪問介護事業所を探す
5.申し込みをする
6.契約を結ぶ
まずは市区町村の窓口で相談し、要介護認定を受けるための申請をします。
要介護認定調査は介護が必要な度合いを調査するもので、認定結果は要介護1~5、要支援1・2、非該当(自立)のいずれかです。
要介護認定調査員が自宅などを訪問して調査を実施したのち、審査が行われて認定結果が通知されます。
要介護に認定されたら居宅介護支援事業所のケアマネジャー、要支援なら地域包括支援センターにて、介護サービスを利用するためのケアプラン(要支援は介護予防ケアプラン)を作成してもらわなければなりません。
ケアプランは介護が必要な本人や家族と相談して作成されるため、訪問介護の利用を希望していることや現在の状況を伝えて必要なサービスを盛り込んでもらいます。
利用する訪問介護事業所が決まったら契約をして、サービスの利用が開始となります。
訪問介護事業所の選び方のポイントを紹介するっポ。
訪問介護事業所を探すときにコツはあるのでしょうか。選ぶ際には以下のポイントを意識してみてください。
・複数の訪問介護事業所を比較検討する
・サービス内容や料金の説明がある
・適切なサービスが実施されている
複数の訪問介護事業所を比較検討する
ひとつの事業所を検討するだけでは良し悪しの基準がわかりません。できるだけ複数の事業所で話を聞きましょう。担当者に直接会って話を聞くと、事業所の方針や特色を把握しやすくなります。
ケアマネジャーは地域の事情に詳しいため、おすすめの事業所を聞いてみるのもひとつの手段です。
サービス内容や料金の説明がある
提供されるサービスの詳細や費用についてきちんと説明してくれる事業者は信頼できます。
事前に十分な説明がないなど対応に不安があれば、他の事業所も検討しましょう。比較・検討するために、いくつかの事業所で同様の質問をしてみるのもおすすめです。
適切なサービスが実施されている
介護保険サービスの提供はケアプランに基づいて実施されていることが基本です。サービス内容に違いがあれば、必要なサービスが受けられていない可能性があります。
提供されるサービスに問題がある、ヘルパーの対応や態度に問題があるなど、利用を開始してから問題が発覚した場合はケアマネジャーに相談すると対応してもらえます。
事業者は変更できるため、ヘルパーと相性が合わないと感じたときもまずは相談してみましょう。
訪問介護は自宅などで必要な介護を受けられるサービスです。家族の介護負担を軽減しながら住み慣れた自宅で生活を継続できます。
訪問介護の料金は要介護度による違いはなく、利用するサービス内容や所要時間、その他の加算により決まります。介護サービス費用の負担が大きい場合は、軽減制度の利用も検討しましょう。
費用の負担が大きくならないよう、介護を必要とするご本人、家族の要望をケアマネジャーにしっかりと伝えたうえでケアプランを作ってもらうことも大切です。
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April 22, 2024 at 02:00PM
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