やっぱりお金は大事
綺麗事じゃなく本音を言いたい。やっぱりお金って大事だ。何をいきなり、って思うかもしれないけど、前回は何だか数学みたいな話をしてしまったので、今回は少し初心に戻った話をしようと思う。
今まで何度か「人生のハンドルを握っている大人になるために」みたいな表現を使ってきた。もちろん「人生のハンドル」を握っているという感覚には色んな要素があると思う。絶対にお金だけではないと思う。それでもやはり、お金が占める部分は相当に大きいと思う。
ところで、気づかれているかもしれないが、僕は政治にまったく興味がない。
僕は不遜にも、政府がどうあれ景気がどうあれ、自分と自分の家族のことは自分で何とかする、しなくては、みたいに思っていた。税金や社会保障などの負担は上がる一方だし、と思ったら急に「何とか給付金」がバラまかれたりした。その度に政治が紛糾して、ニュースが騒いだけど、僕はそんなのに関係なく、自分の家族を余裕で守れているようでありたいと思ってたんだと思う。
もちろんそれはとんだ勘違いで、実はすごく恵まれた日本という国に生まれたおかげで、たまたま巡り会えた会社のおかげで、何とかやってこれたに過ぎない。それでも若気の至りというか何というか、「自分のことは自分で何とかする。そのためにはお金をしっかり貯めておかねばならない」っていう思いが強かった。32歳で初めて転職したのが外資系だったことで、否応なしに自立心のようなものが芽生えた面もあると思う。
前にも少し話したが、一時話題になった「FIRE」というコンセプトがあります。
Financial Independence, Retire Early(金銭的自立と早期退職)の頭文字だ。この前半のFIについては、僕が勘違いしながらも意識していたのと同様。話題になった最近では若い世代の中にもFIREを目指してる人もいるだろう。まさに「人生のハンドル」を握るために。後半のREについては、早期退職を目指すよりは、いつまでも辞めたくないと思える仕事を見つけることに頑張る方が、人生は豊かになりそうだとだけ言っておく。
とはいえ、普通の勤め人がお金をつくるには?
でも普通の勤め人である僕らは、そう簡単にFinancial Independenceにはなれません。一念発起して起業して成功でもしない限りね。だからこそ、ずっと話してきたコツコツの積立はマストであり、手取りの25%~30%の「本気の積立」を、夫婦一緒にオープンに長期戦で臨むことがおそらく最善の作戦だ。
そして日々の仕事を頑張ることで毎月の積立の金額を上げていく。この俗に言う「入金力」のアップはすごく大事だ。いつまでも月1万円ではいくら時間をかけても、いくらスゴイ投資信託を選べたとしても結果の金額はたかが知れているからだ。
そしてもうひとつ大事なことが、人生における「見栄」との付き合い方だと思う。ウチの家族は僕もパ―トナーもその点で有利だった。決してケチケチな家ではなかったと思うし、色んなところに皆で遊びに行ったけど、そういう時の宿もレストランも、普段着る物も乗る車も、住む場所にも見栄はなかったんだ。
見栄と上手に付き合い、「入金力」アップのために仕事を頑張り、できるだけ早い段階から「本気の積立」をずっと続ける――。これができれば、仕事を辞められるほどではないにしても、「人生のハンドルを握っている感」が持てるまでの段階に、思ったより早く近づけるはずだ。
その前に必要なのは「いくらあったら?」を知ること
というわけで、手取りの25%~30%の積立を頑張ろう!ということを何度も言ってきた。一方で「いったい将来いくらあったらいいんだろう」という具体的な金額のことは言ってなかった。この「最初に目標金額を持って始めること」って、実はすごく大事なことだと思う。
Financial Independenceって、やっぱりピンとこない。1億円とか2億円とか、あるいはもっとないとダメなんじゃないかって気がしてくる。もう少し現実的な目標金額じゃないと頑張る気にすらならないだろう。
では質問。65歳になって定年退職する時にいくらくらいのお金があったらいいと思う?退職金で家のローンの残りを全部返しちゃったので住む場所の心配はないってことにしよう。親の世話とかも気にする必要ナシとしよう。子供はいるが、独立していて特に心配することもない。つまり2人が夫婦で素敵なセカンドライフを送るスタートタイミングだってことにしよう。では、実際に想像してみよう。
2,000万円?2人で?一旦それで。65歳で2,000万円持ってます、と。
では今度は使う方はどう?月いくらくらいお金使いそう?
20万円?それなら、30日で割ると1日当たり6,666円になる。
なるほど。ということは以下のような図になる。
1%の1ヵ月複利で運用しながら毎月月末に取り崩す計算。表示される結果は何らかの商品の運用成果などを約束するものではありません。また、手数料・税金等は考慮していません。
どうだろう。引き出し可能年数が8.7年ということは、2,000万円を銀行に置いておいて毎月20万円ずつ引き出していくと9年経たないうちに残高がゼロになるという計算結果になる。9年後には2人は路頭に迷わなくてはならない!と。だってそうだよね。単純に2,000万円を240万円で割り算しただけ。別に悪気はない。
2,000万円ってすごい大金だ。宝くじでも当たらないと手に入らないイメージがある。だが、いざセカンドライフで使っていこうと思ったら、全然弱い。充分とは言えない。ビックリだ。いったいいくらあったら安心と言えるんだろうか。下の表を見てほしい。
1%の1ヵ月複利で運用しながら毎月月末に取り崩す計算。表示される結果は何らかの商品の運用成果などを約束するものではありません。また、手数料・税金等は考慮していません。
これは期間の方を20年間に固定して、つまり65歳からなら85歳までに毎月いくらずつなら使っていけるんだろう、という表。2,000万円なら、さっき月に20万円使うって言ったのを9万2,000円に抑えられれば無事85歳まで持つってことだよね。
でももし3,000万円あったら、月13万8,000円ずつ使うことができる。20年間ずっと。ちなみにこの計算では年利1%の預金に置いておいて、毎月取り崩していく計算にした。今の銀行預金にはそんな利率は付かないけど、ずっと先の金利なんて分からないから適当に1%にしてみた。もし今と変わらない超低金利時代だったとしたら、取り崩せる金額はこれより小さくなるってことだ。
さあ、もし5,000万円あったとしたらどうだ。月23万円だって。すごい。君が月20万円使いたいって考えるなら、持っているべきお金は2,000万円じゃなく5,000万円だったってことだ。
さてさて、この表を見て、どう思っただろうか。すごく単純な計算なんだけど、僕はこの表から考えることって、大げさでも何でもなく、人生設計をすることと等しいと思う。
当たり前だけどお金って、使うために持ちたい。それを使って人生を安心して送り、さらにはより豊かにしてこそ意味がある。いくらお金を持っていても、それを使えずに死んでしまったとしたら、通帳の上の記号を見て満足してただけだよね。つまり不必要にたくさんのお金なんて、僕はいらないと思うわけだ。
自分にとっての必要なだけを持ち、しっかりと意味ある使い方をするってこと。「DIE WITH ZERO」(ゼロで死ね)っていう本が数年前に流行った、僕はまさにそれを目指そうと思う。パートナーと2人で使い切って死にたい。
そう考えると目標は3,000万円で十分。もし5,000万円に到達してたら最高、って感じだ。
3,000万円なら月13万8,000円、5,000万円なら月23万円を20年にわたって取り崩せるお金ってことだ。それで問題ないと思う根拠は、公的年金で最低限の暮らしができると思うから。
年金で生活をし、月13万8,000円、つまり1週間あたり3万5,000円をすべてプラスアルファの楽しみに使う。あるいは月23万円なら週6万円くらいが使える。最高だ。
こう言うと、若い世代は「私たちは違うんだよ。年金なんてアテにできないんだから」って言うんだと思う。どうして日本人にはここまで年金不信が根付いてしまったんだろう。それは間違いです。その話はまた次回に。
<父から娘への黄金ルール、「フルバージョン」はこちら>
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