Thursday, May 27, 2021

パートの社会保険拡大で誰がいくら得する? - マイナビニュース

大企業に勤務して、月給8万8000円以上を稼ぐなど一定の条件を満たすパート労働者は、社会保険(厚生年金・健康保険)に加入することになりましたが、この社保に加入するパート労働者の範囲がこれから拡大していくことなっています。

◆今後もパート労働者の社会保険加入は拡大する
平成28年10月から、厚生年金被保険者が常時501人以上の企業等(国の公共団体含む)に週20時間以上勤務し、月額8万8000円以上の給与を受け取る、1年以上勤続(見込みも含む)、学生でないパート労働者は厚生年金・健康保険に入ることになりました。

さらに平成29年4月からは、企業等の人数要件がなくなり、労使合意があれば(地方公共団体含む)、パートの方も厚生年金・健康保険に入るよう法律が改正になりました。

厚生労働省では令和元年9月までに9回の「働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会」がとりまとめられており、短時間労働者(パート)への社会保険の適用拡大についても話し合われました。

一時期、「早ければ2021年4月には変わるのでは?」と報道された、パートの厚生年金・健康保険への加入要件が月給6万8000円以上になる案については、令和2年6月の年金改正法案にも含まれておらず、見合わせになっています。

ただし、国・地方自治体などに勤務するパート(厚生年金・健康保険の適用対象)について、公務員共済の短期要件を適用する案は、令和2年6月の年金改正法案に含まれており、令和4年10月に適用される見通しです。

同じく令和4年10月には、「常用労働者が100人超の企業で2カ月以上勤務見込みのパート労働者」や今まで対象外だった「弁護士、税理士、社労士等の法律系個人事務所で5人以上常用労働者がいるところで働くパート労働者」も厚生年金・健康保険適用になります。

令和6年10月には、常用労働者が50人超の企業で働くパート労働者が厚生年金・健康保険適用、という形で順次社会保険に加入するパート労働者が増えます。

◆年収82万円以上で厚生年金・健康保険料が引かれるようになる?
もし、月給6万8000円以上で厚生年金・健康保険料が差し引かれた場合、手取りはどのくらいになるのでしょう?

月給6万8000円(年収82万円)以上で厚生年金保険料が月額約6300円、健康保険料が月額約3900円差し引かれると、5万7800円に手取りは減ってしまいます。

会社員の妻(被扶養配偶者)の場合、社会保険料分も差し引いて手取りを挽回するには、月給8万円(年収96万円)以上になるまで働かなければならないのです。
年収82万円以上で社会保険料が引かれてしまいます

◆60歳以上で年金をもらいながら働いている人に影響も……
パートの社会保険拡大といえば、主婦をまず思い浮かべますが、60歳以上で年金をもらいながら働いている短時間労働者もいます。今までは週20時間の労働時間で月給6万8000円なら厚生年金保険料を払う必要がなかったので、年金(在職老齢年金)は全額受けることができました。

もし、法律改正が通ったら、週20時間以上働き月給が6万8000円だと、在職老齢年金の仕組み上、年金が一部支給停止されてしまう人も出てくるでしょう。

◆パートの社会保険拡大で得するのは誰?
手取りが減ってしまう人もいますが、パートの社会保険対象者が拡大されるとメリットのある人もいます。パートが月給6万8000円で厚生年金・健康保険に入るようになってお得なのはどんな人でしょうか?

「現在、パートの年収82万円(月給6万8000円)以上で働き、自分で国民年金を支払っている人」がお得になります。

自営業者やその妻、20歳から60歳までの失業者・退職者やその妻は、原則第1号被保険者として毎月1万6610円(令和3年度)の国民年金保険料と他に国民健康保険料を支払っています。月給6万8000円のパートでも社会保険に入れれば、厚生年金は月約6300円、健康保険は月約3900円で済むのです。その上、配偶者や子どもを扶養に入れることも可能です。

◆パートの社会保険拡大で損する人はいる?
パート(短時間労働者)の社会保険が拡大されると「損をする」と感じるのはどんな人なのでしょうか?

1. 企業等の事業主
特に中小企業は負担が重いと感じるでしょう。厚生年金も健康保険料も事業主の負担が半分あるので、パートの社会保険が拡大されると、事業主負担も増えるのです。

2. 会社員の被扶養配偶者(国民年金第3号被保険者)
会社員に扶養されている配偶者は、勤務先で自分が厚生年金・健康保険料を支払うことになれば、手取りでは損をすると感じるでしょう。しかし、パートの月給6万8000円でも1年間厚生年金に加入すれば、保険料を月額約6300円支払いますが、一生老齢厚生年金が年額約4400円増えます。

その上、万一のときの障害年金も国民年金より緩い基準で請求できます。健康保険料を月額3900円支払いますが、病気、ケガなどで働けなくなったときは、傷病手当金が支給されます。

厚生年金・健康保険など社会保険料を支払うことで、個人年金と医療保険の役割を兼ねることができるのです。このようなメリットもおさえておいたほうがいいでしょう。

文=拝野 洋子(マネーガイド)

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May 27, 2021 at 06:30PM
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