
▼老後資金の計算方法
――いくら貯めるべきか?ではなく、実現可能な「MY老後資金」から老後を描く。これまでと逆の発想ですね。
八ツ井さん:MY老後資金を出すには、「年間貯蓄額」×「リタイアまでの年数」+「退職金(目安)」+「現在の貯蓄-リタイアまでにかかる大きな支出」で計算します。これがあなたの等身大の老後資金。これをベースにどんな生活が描けそうかを考えてみてほしいんです。
――必要な老後資金は、一般的に「3000万円」、メディアによっては「1億円必要」というところもあり、混乱してしまいます。
八ツ井さん:1億円と提示しているところは、老後にかかるお金をすべて累計して、年金を引いてないケースもあるようです。
年金などもろもろの金額を引くとだいたい3000万円でおさまったり、ある雑誌で老後に必要な資金を算出したときには、1000万円台後半に落ち着くケースもあったりしました。これには編集者の方も「その金額で足りるんですか?」と驚いていました。
家族構成や生活費、リタイアの年齢など、前提条件しだいで計算結果は大きく変わります。あまり数値に惑わされないでほしいです。
今、60代の平均貯蓄額(金融資産)が約1500万円 。巷でいわれている「老後資金3000万円」も持っていない人が大半ですから、不安に陥るのも当然かもしれません。
そうした金額ばかりを基準にしていると、不足分にばかり目がいって、不安で今やるべきことに集中できなくなっては本末転倒。それよりも「自分の老後資金」を知り、そこから暮らしをイメージするほうが現実的だし前向きです。
MY老後資金を増やしたいと思えば、リタイアの時期をもう少し伸ばそうとか、今の収入を上げるために努力する、暮らしを見直して支出を引きしめるなど、次の行動に意識が向きます。
人との比較ではなく、自分だけの老後生活をしっかりと描くことが大事だと思いますよ。
教えてくれたのは……八ツ井慶子さん
埼玉県出身。法政大学経済学部経済学科卒業。2001年4月より、「家計の見直し相談センター」の相談員としてFP活動を始める。13年7月に独立し、「生活マネー相談室」を設立。個人相談を中心に、講演、執筆、取材などの活動を展開。これまで1000世帯を超える相談実績をもつ。
取材・文:西尾英子
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June 13, 2021 at 09:30AM
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