候補者を間違えた―。過去最多の56人が立候補した東京都知事選が7日に投開票された後、こんな投稿が交流サイト(SNS)に相次いだ。前広島県安芸高田市長で次点となった石丸伸二さんと、同姓の弁護士石丸幸人(ゆきと)さんを混同してしまったということらしいのだが、果たして真相は?(山下洋史)
◆9万票獲得「幸人」氏本人も「非常に驚いている」
小池百合子知事が3選を果たした都知事選では、政党の支援を受けずに165万票を集めた石丸伸二さんの健闘が注目を浴びた。一方で、政治家経験がなく著名人でもない石丸幸人さんも9万6222票を獲得し、8位に入った。
石丸幸人さんは、自身のユーチューブチャンネルで「8位になって非常に驚いている。2位に同じ名字の元市長がいたので、書き間違いが入っただけではとのコメントが来る。どの程度あったのか、考察をしたい」と話した。
◆名字だけの「案分票」はわずか2600票
石丸姓の候補者は2人だけ。各自治体の選挙管理委員会への取材では、今回の都知事選で「石丸」と名字だけ書かれた案分票は約2600票あったが、これは石丸幸人さんの10万票に迫る得票のわずか一部にしか過ぎない。
選挙コンサルタントの大浜崎卓真さんは、投票ミスが多かったのではないかと指摘する。理由の一つは、届け出順で候補者が並ぶ掲示板ポスターとは違い、投票所の記載台の候補者の並び順は自治体が、くじで決めること。実際、石丸幸人さんの名前が、石丸伸二さんの前に書いてある記載台はあった。
大浜崎さんは「投票に行っても、届け出順と違うことから探しづらい。同姓候補が複数人いることを知らないと、先に目についた候補の名前を書いてしまう」と話した。SNSにも「名字で認識していたから、記載台で先に目に入った名前を何の疑いもなく書いて投票してしまった」といった内容の投稿が目立つ。
◆「2人いると知らず投票した人が相当数いたはず」
投票制度に詳しい東北大大学院の河村和徳准教授(政治学)は「都知事選では石丸さんが2人いると認識していなかった人はかなりいるはず」と指摘。対策については「顔写真も載せると間違いが減るだろうが、法改正も必要で難しい。年齢や住所、肩書などの記載をある程度認めるのが現実的ではないか」と話した。
案分 同一の姓または名の候補者が2人以上いて、どちらの候補への投票か特定できない疑問票を、候補それぞれの有効投票数の割合に応じて配分する仕組み。
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